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【39】心理的安全性について押さえておきたいこと(2)

前回の投稿で、上司と部下という関係が存在する全ての組織は、そもそも心理的安全性はマイナスからのスタートであるということをお話しました。

その続きである今回は、読んでくださる方が、リーダーや経営者、管理職など、組織においていわゆる上位レイヤーにいると仮定して話を進めます。

冒頭で述べた通り、組織における心理的安全性はそもそもがマイナススタートですから、メンバーの親睦を深めるために飲みに連れていったり、部下が心を開けるように雑談を増やしたりしても、それだけでは不十分、もしくは的外れであると言わざるを得ません。

では、それ以外に、どんなことができるでしょうか?

答えは一言、「自分に矢印を向け、自分と向き合って、自己を成長させていってください」です。

とはいえ、もちろん、上司だからといって聖人君主のような人格者にならなければいけないわけではありません。

そもそも「〜ねばならない」「〜べきでる」という思考は、あなたの本来の生命の流れを阻害するフィルターとなりますから、うまくいくものもうまくいかなくなります。

ですから、まず大前提として、上司と呼ばれる立場のあなたが、心の底から「組織を進化成長させていきたい」と思っていること、そして「そのために自らも進化成長していきたい」と思っていることが何よりも重要です。

そのマインドセットができているという前提で、では、組織の心理的安全性をさらに高めるためにどんなことができるか、具体的に考えていきましょう。

いつでも話しかけやすい雰囲気でいる

まず第一にできることは、あなたがいつもご機嫌でいることです。

いつもご機嫌でいる、すなわち、いつも話しかけやすい雰囲気でいる、ということですね。

上司であるあなたは部下たちより多くの報酬をもらっているはずです。その報酬の高さは部下たちより責任が大きく、その分、ストレスも大きいことの対価ではなく、自分がご機嫌でいられるように使うものだ、と発想を転換してみてください。

そう。あなたがしっかりと自分を満たしていれば、自然とあなたはご機嫌な状態になりますし、ご機嫌なあなたは自然に部下が話しかけやすい雰囲気になっているはずです。シンプルですが、とっても大事なことです。

もちろん、一瞬たりとも気を抜かずにご機嫌であることは簡単ではないですし、とても笑ってはいられないトラブルが発生することだってあります。そういう時に無理して笑顔を作ることは本来の生命の流れに逆らう選択ですから、動作学的にはぜひとも避けたいところ。

では、どうすればいいかというと、どうしても笑顔になれない時は、部下に見られないところにいって、その問題についてできることを片付け、ある程度落ち着いたところで部下の前に戻ればいいのです。

要は、「虫の居所が悪いのかな?」「今は声をかけないほうがいいかな?」と部下のほうがあなたの機嫌を伺わなければいけない状態にしないこと。そうすることで、部下は安心してあなたに話しかけやすくなります。

ちなみに、必ずしも不機嫌なわけではないけれど、話かけてほしくない時は、ホテルのドアにかける「Don’t Disturb」の札のように、それとわかるサイン(紙切れなど)を用意しておいて、「このサインがある時は話しかけるのは後にしてほしい」ということを伝えておくのも一案です。

自分の目指す姿を伝える

自分は人間としてどうありたいのか? 上司としてどうあることが理想と考えているのか? 自らが目指す理想の姿を、部下に伝えるようにしましょう。

たとえば、「常に話しかけやすい上司でありたい」ということを伝え、「もしそれができていない時は指摘してくれ」と言っておけば、何らかの理由で自分が理想の状態であれない時も、「ころころ態度が変わって何を考えているかわからない」と部下が不安になることが減るはずです。

さらに、「さっき、怖い顔をしていましたよ。話しかけづらかったですよ」というようなコミュニケーションを部下のほうから取りやすくなります。

先に述べたことにも通じますが、部下が上司の腹の中を探らなければいけないような状況にしないことが、心理的安全性を高めるためにとても重要なんですね。

自分は完璧じゃないことを認める

これは一言で言えば、謙虚であれ、ということです。

具体的には、自分が間違いをした時は間違いを認めることができる、知らないことを聞かれた時は知らないことを認めることができる謙虚さです。

役職がつくような立場になるほど、「部下の質問には全部答えられるようでなければいけない」「この部署のことについては全部把握しておかなければいけない」といった責任感から、完璧でなければいけないという思いに囚われがちです。

でも、当然ながら、人の上に立つ立場になったからと言ってもわからないことはありますし、間違えたり、失敗したりすることもあります。

そうした時、上司である自分が自らの間違いや失敗を認めることは、部下たちに「間違いや失敗をしてもいい」というメッセージを暗に伝えることになります。

そのような姿勢が、組織内に失敗を許容できる文化を生み出し、心理的安全性を高めることにつながります。

動作学的にチームを見る時、リーダーに求められる強さとは、自らの思う方向にぐいぐい部下を引っ張っていくような強さではなく、謙虚に自分自身の限界を認めてさらけ出せる強さ、です。

その強さをリーダーが持った時、そのチームはリーダーや一人一人のメンバーの限界をはるかに超える創発を起こせる組織となり、自ら進化成長していくようになるのです。