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【45】 「今ここを大事にする」と夢は叶う?

「今ここを大事にすると幸福度が上がる」ということについて、ここ数回、動作学的な視点から解説をしてきました。

要は、「今のあなたの気分を感じ取って、もし気分がよくないならば気分がよくなる選択をしてください」ということ。もっと端的に言ってしまうと、「今、あなたがいい気分になるために、今やりたいことをやってください」です。

ところが、そうなると、気になってくることもあると思うんです。

「今、やりたいことをやっていい気分になるのはいいが、未来に達成したい目標はどうなるのだろう? やりたいことをやっているだけでいいのか?」

未来に達成したい目標というのは、たとえば実現したい夢というような大きいスケールのものもあれば、締め切りまでにやらなければいけないタスクのような現実的なことの場合もあるでしょう。

もしそれらについて個別に相談を受けるのであれば、その人、その状況に応じて、何を強調してお伝えしたいかは変わってきます。

ただ、誤解を恐れず、あえて本質的な部分だけお話すると、「どのような場合でも、今、あなたがいい気分になるために、今やりたいことを実行してください」というのが動作学的な回答となります。

どうしてか?

動作学のレンズを通して、見ていきましょう。

「今◯◯したい」は何であっても最適解である

まず思い出していただきたいのは、今の気分というのは、それが何であれ、生命のシステムが出してきている最適解である、ということです。

何度もお話ししているインプット・プロセス・アウトプット(知覚行為循環)という仕組みのことなのですが、あなたの生命のシステムは、あなたがどういう目標を持っているか、未来に成し遂げたいことは何か、といった情報も含めて、意識できるものから潜在意識下のものまでありとあらゆる情報をインプットし、それらを脳でプロセスした結果、今の気分というアウトプットを出してきているんですね。

その観点でいうと、「今◯◯したい」という気分は、一見、目標と全く関係ないように思えても、実はその目標に近づくために今やると最適なことである、とも言えるんです。

たとえば、夢を叶えるために今日は勉強に集中する予定を立てていたのだけど、今朝起きたらちょっと一休みして体を動かしたい気分だった…ということであれば、その気分に従って行動することは夢を叶えることから遠のくことではなく、むしろ最短ルートであると考えてもいいくらいなんですね。

我々は往々にして、目標に対して、達成までのプランを練り、そのプランに従って行動することに重きを置くのですが、そもそも物事というのはAを実践すればA’が実現するというふうに直線的には進みません。

たとえば、数人が全く同じ筋トレのプランを実行したとしても、同じふうに筋肉が変化することはありえません。

なぜなら食べているものや、体内で行われている代謝、もともと備わっている体の機能、持っている思考回路など、それぞれの人によって環境が異なるからなのですが、ともすると、そのことは頭から抜けてしまいがちです。

世の中にある成功論を同じように実践しても必ずしも皆が同じ結果にならないのもまさに同じ理由。たとえ目指すゴールは同じでも、そこに至るためのベストな道筋は人によって異なるのですね。

では、どの道が自分にとってベストなのか、その道標になるのが、あなたから出てくる最適解、つまり「今◯◯したい」という気分なんです。

もちろん、目標に向かうためにプランを立てることは悪いことではありませんし、目標に向かって何かしら行動することが重要であることは変わりません。

ただ、目標達成のために立てたプランを予定通りに遂行することに縛られて、今、したいことを軽視することはよくあるので、今したいことをして自分をいい気分にしておくこともちゃんと目標につながっているという視点も持っておくと、目標達成までの道のりが、より気分よく、スムーズなものになるのではないでしょうか。

物事が変化する順番は、プログラム→機能→構造

もう一つ、我々が見逃しがちなのは、未来に起こる変化はどうやってもたらされるか、という変化の本質です。

目標を達成するというのは、言い換えると、心に思い描いていたことが現実に目に見える形で現れること。

つまり、目に見えなかった物事が、目に見える形に変化したとき、人は目標を達成した、夢を実現した、と言うのですね。

動作学のレンズを通すと、これは適応、です。

適応は、必ず、プログラムの変化→機能の変化→目に見える構造の変化、という順で起こります。

最もわかりやすいのは体の変化。

たとえば、いわゆるスマホネックと言われる首の変化は、首の骨と筋肉の構造的な変化、つまり目に見える変化が既に起こった状態です。

なぜ構造が変化したかというと、首を前に傾ける機能を強めるように筋肉の機能が変化したから。

では、なぜ筋肉の機能が変化したかというと、日々の中で首を前に傾けるというプログラムを実行したからなんですね。

ここで言いたいことは、目に見えるような構造の変化が起こる前には、必ずプログラムの変化があるということです。

この場合のプログラムというのは神経系のことで、まさに今この瞬間のあなたのインプット・プロセス・アウトプットの積み重ねがあなたの実行しているプログラムなんですね。

ですから、今いい気分でない選択を続けることは、いい気分にならないプログラムを実行しているようなもの。となると、未来もいい気分にならないことが実現する、という図式が成り立つんです。

もちろん、いい気分になるというプログラムを実行したからといって、思い描いていた目標が思い通りに実現するとは限りません。

ただ、いい気分のプログラムを実行していれば、未来に現実化される何かもいい気分になるものだということは言えます。

そもそも、この人生における時間は有限であることを、皆、頭ではわかっているのに、実際に時間を大切にできている人は意外といません。

将来が心配だから今は苦しくてもお金を貯めておく、未来の夢を実現するために今は無理をしてでも人脈を作っておく…ともすれば「将来のために」という言葉のもと、今という時間を苦しいこと、無理をすることに費やしていることは少なくありません。

でも、考えてみていただきたいのです。

社会を見渡せば、お金や人脈は、あなたという一人の人間に対しては無限と言っていいくらい膨大にある資源です。たまたま今、あなたの手元にはないかもしれませんが、今後いくらでも手に入れられる可能性があります。対して、あなたという人間が持てる時間は、80歳まで生きるとしても4000週間しかありません。時間だけは何をどう頑張っても確実に減っていく資源なんです。

そう考えると、将来のために今を犠牲にするのは、もったいない…。

今いい気分になることを選べば、未来のいい気分にもつながるとなればなおさらです。

しかも、今いい気分になることは、今のあなたの選択で今すぐできること、なのですから。