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西村賢太「芝公園六角堂跡」

 引き続き西村賢太を読む。
 他には再読中の色川武大や、青空文庫から岡本かの子や芥川龍之介の小説をKindleで読んでいる。西村賢太と西村賢太の間にあまり新しい作家の本を挟まないように気を付けながら読書を続けている。
 
 四編が収められている短編集。

『芝公園六角堂跡』
 少年時代から大ファンである稲垣潤一氏のライブに招待され、浮かれる四十七歳の北町貫多。ライブ会場のすぐ近くが、藤澤清造が没した土地であったと、気付きながらも目を逸らしていたが、最後には向き合う。

『終われなかった夜の彼方で』
 前作『芝公園~』の一部についてうだうだと悩みながら、古書の目録販売の中に藤澤清造の書簡を発見し、手に入れる算段をする北町貫多。

『深更の巡礼』
 この一冊に登場するのは全て2015年の北町貫多である。田中英光の文庫本の本文校訂に四苦八苦する北町貫多。

『十二月に泣く』
 藤澤清造の墓のあるお寺の住職の奥さんが亡くなり、お寺へお悔やみに訪ねる北町貫多。

 自身の中に西村賢太という作家が大きく君臨し始めた、というわけでもないのだが、氏の急逝以後、自分に残された時間を少なく少なく見積もってしまい、焦りが出てきた。一日三枚何かしら書くと自分に課した。小説なら一編に三枚でなくてもいい。三編を一枚ずつでも、二百文字の断片を六つでもいい。ほんの少し書き進めるだけであっという間に文字は増えた。三枚どころか一日十枚以上書いた。すぐに出さずにオフラインに留めておくようにした。詰まれば他に移った。子どもと遊んでいる最中も、今書いている話の続きばかり考えていた。




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