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「靴になった骨」#シロクマ文芸部

 白い靴のような骨が残った。祖父は日々歩き続けているうちに足が靴のようになった人だった。死因は「歩きすぎ」と診断された。骨が靴の形になるまで歩き続けたものの、足に身体がついていけなかったのだ。上半身と精神は足からどんどん離れていき、下半身は歩き続けながらも、上半身は寿命を迎えてしまった。お通夜は騒がしかった。バタバタ暴れる下半身を無理やり棺桶に納めるのに苦労したからだ。

 祖父の死以来、飛び回るような忙しさで夫の死の後始末をしている祖母には羽根が生えてきた。あちこち移動するのに老婆の足では大変なので、飛んだ方が早いためだった。羽根の邪魔にならないように、背中の大きく開いたドレスを着る祖母は若返って見えた。

 そういえば白い靴のようだった祖父の足の骨は、焼かれてもまだ歩き足りなかったらしく、斎場を逃げ出した。職員の方も「よくあることですから」といって気に留めなかった。今では空を飛ぶ祖母の後を、カタカタと騒がしくついていっている。時折カラスにつつかれている。

(了)

シロクマ文芸部の今週のお題「白い靴」に参加しました。


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