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「kindle出版への道②繋がる読書の話」

 現在読書のほとんどを、kindle unlimitedを利用した電子書籍でしています。読んだ本は読書メーターとブクログに記録しています。大半を入院していた2月の読書量が53冊という異常値を叩き出していました。冊数が多ければいいというわけではありませんが、正直数字として積み重なっていくのを見るのは嬉しくもあります。

 その嬉しさの中身の一つとして、作者への還元があります。kindle unlimitedを利用しての読書の場合、具体的に1ページあたり0.5円が作者に入る仕組みとなっています。僅かではあっても、自分の読書が作者の収入へとなるのです。作者の努力に読書で還元できるのです。

 十代半ばに読書に目覚めてから、仕事と子育てに忙殺される時期まで、私の読書生活の中心は、図書館から借りた本と古本屋で購入した本によるものでした。そのことに罪の意識を感じていました。「図書館に月々お金を払える仕組みならいいのに」と十代で考えていた覚えがあります。本の感想をよく書いていた時期があるのですが、それは図書館を利用していた時期と重なります。金銭的に作者へと還元できない罪悪感を、感想を書くことで紛らわしていました。せめてものの思いで貼ったAmazonへのリンクは「絶版につき取り扱いできません」だらけでした。

 今回、脳脊髄液減少症による入院生活を終えた後、久しぶりに図書館に行き、本を借りました。本の内容に不満があるわけではないのですが、その読書形態にもやもやした物が残りました。「この読書は作者に還元されない」という意識です。昔感じた罪悪感が蘇ってきました。

 別ジャンルで似た感情に襲われたことがあります。音楽配信サービス向けに、まだ楽曲を配信していないアーティストの曲を聴こうとした時のことです。ハイロウズやマキシマムザホルモンの曲を、昔mp3化したものを探して聴いていました。同じフォルダにRADWIMPSもあったので、流れで聴きました。しかしRADWIMPSは現在配信を解禁しています。オフラインで聴くのではなく、私の入っているSpotifyでRADWIMPSを聴けば、再生回数が増え、アーティストたちへと還元されます。聴くことが自分の楽しみだけでなく、製作者を潤すことに繋がります。オフラインでPC内の楽曲を聴くだけでは、還元されません。

 かつてオジー・オズボーンがパーキンソン病になったというニュース記事を読んだ際、私はしばらくオジーの曲を繰り返し聴いていました。オジーのパーキンソン病を治すことは私にはできません。しかし彼の曲を聴くことで、応援及び金銭的な援助となるのです。少しだけでも、直接繋がることになるのです。

 本の話に戻ります。

 Xにて何気なく本の感想をつぶやいたところ、作者本人から反応があった! という経験のある方は多いでしょう。ダイレクトな繋がりを恐れる人もいますが、そういった反応は「次に何を読もうかな」という際に「この間直接反応を返してくれたあの作家の、違う本を読んでみようか」となります。作者による直接的な宣伝行為を不愉快に感じる方もおられるかもしれませんが、私はそうは思いません。大好きな作家の一人、吉村萬壱先生との幾度かのやり取りは、忘れられないものがあります。天野純希先生、伊東潤先生、石川宏千花先生などの名前が頭に残り続けているのは、直接的な繋がりの影響が大きいのです。

 反対にこんな例もあります。ある作家の小説を読み、面白かったので感想記事も書きました。後日その方が「あの本が売れないなんて、どうすればいいんだ」といった内容の嘆きを書いているのを見てしまいました。売れる売れない、というのは運の要素が大きく、作品の質が良ければ売れるわけではありませんし、売れなかったからといってその作品の価値が低いということでもありません。当然職業として作家を選んでいる以上、売り上げが低い=収入が少ない、というわけですから、嘆きたくなる気持ちも分かります。けれど、少なくとも読者はいたのです。感想を書いた人もいるのです。「売れなかった」の嘆きで、少数の読者までまるで「なかったこと」のようにしてしまっているように見えて、悲しくなりました。「次に誰の本を読もうかな」という選択肢の中から、その方の名前は消えてしまいました。

 図書館の話に戻ります。退院後最初に借りた本を返し、また別の本を選んで借りてきました。そのうちの一冊は西村賢太氏の著作でした。2022年に氏が急逝した折、私はコロナワクチンの副反応の高熱で苦しんでいました。速報記事だけを読んで自殺と早とちりし、「氏のような作風を書いて生き続けるのは許されないことなのか」などと気に病んでいた覚えがあります。今回、未読だった「棺に跨る」を読み進めるうちに、「いくら読んでも氏とはもう繋がれないないのだ」という想いが強くなりました。

 というわけで、借りた他の本に手を伸ばさず、kindle本を渉猟しています。note内で「kindle出版」で検索すると、最近kindle出版された方の本を見つけることができます。書くに至るまでの理由、経緯、その他諸々を知ることもできます。その快感はどちらかというと「他人の脳みそを覗く」ことに近いのかもしれません。一冊の本となるには、ある程度の文章量が用意されます。それを取り込むことは、作者の思考に寄り添うことになります。出版社や編集者を経由していない分、より生に近い作者の結晶を味わえる、といえるかもしれません。

 以前やったように、印象に残ったkindle本の感想をまとめて書こうと思います。

 子どもたちが長い春休みに入ったこともあり、家事や子どもの相手であまり書く時間を取れていません。kindle出版への進捗状況をお知らせするほどでもありませんが、最近の「繋がる読書」について書いてみました。

 最後に、先ほど名前をあげた吉村萬壱先生の名言を紹介しておきます。

 トークイベントにての質問。
「本が売れなかった時のモチベーションはどう保たれていますか?」
「売れたことがありません。だから本が売れないからといって落ち込むことはありません」

(続く)


入院費用にあてさせていただきます。