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音楽随筆集「Space Truckin'」Deep Purple

 子どもたちがマジックショーを始めた。

 立っている息子の横で、娘が布団を高く掲げる。息子は布団の陰に隠れて見えなくなる。その間に息子は隣の部屋へ移り、娘は布団をバサッと床に落とす。
「あれ、ケンちゃん消えた? どこ行った?」と私が取り乱す、という流れ。

 まあ、見え見えだけど。笑いながら走っていったのとか。役割を交代してみたら、背の高い娘を全然隠せてなかったとことか。

 問題はそんなことじゃないんだ。
 娘はショーの間、ある曲を口ずさんでいた。マジックショーってよく「チャラララララーン」みたいな感じの音楽が流れるじゃないか。
 そんなノリで、娘が口ずさんでいたのは、ディープ・パープル「スペース・トラッキン」のイントロだったんだ。

 なぜそんなことが起こったのかって? 私のせいだ。原曲を聴くよりも先に、私の口ずさんだ「スペース・トラッキン」が、二人の子どもの耳に沁みついてしまっているのだ。

 現在凍結中の「音楽小説集」にこう書いてあった。約三年前のことらしい。

 我が家の三歳児も「Space Truckin'」のイントロのギターリフを口ずさんでいる。幼稚園で習っているらしいABCソングの次くらいの頻度で「デデ、デ、デ、デー。デー、デー、デデ!」とやっている。
 きっかけはお風呂だ。娘のココと息子の健三郎と一緒に入る際、私が洗っている間、二人は湯船に浸かりながら遊んでいる。私が洗い終わってもまだ遊び続けたいので「どっちから洗う?」と聞くとお互い相手を指差して決まらない。そこで私が「どちらにしようかな、天の神様の言うとおり」のノリで、「Space Truckin'」のイントロに合わせてロボットの動きをする。二人に交互に手を差し伸べる。リフの終わりに手を差していた方を先に洗う。その前段階としては、バスボールの中に入っていた小さな人形を「これねえね(姉)」「これけんちゃん」と言って手渡され、私が人形を洗いながら、子どもらでない事に気付く、というミニコントも挟まる。

 そんなわけで、健三郎は原曲を知る前から「Space Truckin'」のリフを口ずさめるようになってしまった。実際に曲をかけてもそんなに反応はない。娘のココに「Space Truckin'」のライブ映像を見せると「あー、パパがお風呂でやってたやつね」と言われる。
「元の曲の何倍もの長さになってて、特にキーボードが」
「はいはい」
めんどくさいロックおじさんのあしらいを心得てしまっている。

 皆さんの家にはどんなディープ・パープルの曲が流れていますか? ぜひコメント欄で教えてください(大丈夫です。教えてくれなくて構いません)。子どもたちの一番好きなディープ・パープルの曲アンケートなどもいいかもしれませんね。

(了)


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