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耳鳴り潰し51

 息子の咳が酷くて夜中に何度も起きてしまい、私もあまり眠れなかった。娘まで喉と頭が痛いと言い出す。脳脊髄液は睡眠中に補充されるため、酷い睡眠不足の時の私は、歩くのがやっとの状態である。少し眠ってから息子も含めて三人で病院に行こうかと思ったが、妻に止められた。妻に仕事を休ませてしまった。

 結局私だけ昼前まで寝直す。ワンピースとドラゴンボールが混じった壮大な夢を見る。海軍を裏切った人が、いつの間に自分が裏切っていたのか分からなくて混乱している場面や、戦争で大混乱になっている都市と、平穏な日常が同時進行している場面を見ながら「漫画でしか表現できないことだ」などと思っていた。

 起きると回復していた。近所に出来た大型スーパーに買い物に行く。開店後一週間くらいだがまだまだ客足は多くて大混雑していた。近隣のスーパーを駆逐しそうな価格帯であった。我が家の定番商品も大体置いてあった。食パンともやしだけは安くなかった。品切れであった物と食パンだけ別のスーパーで買う。

 後ろからおばあちゃんにカートをガツガツ当てられながら、「新規開店したスーパー『ディストピア』に行ってきた」という記事を考える。お立ち台で店長が即興ラップで盛り上げる。混雑して引き返せないために大声で商品を求める客と、それに答えて投げつける別の客など。そのうち書く。

 バタバタしていると耳鳴りのことを忘れていたな、と考えてしまった。意識すると耳鳴りの圧力に気付いてしまう。常にバタバタしているか、常に何かに集中しているのがいいようだ。

 平山瑞穂「エンタメ小説の失敗学~「売れなければ終わり」の修羅の道~」を読みながら、某出版社のある時期の文芸書の傾向を読んで頷くところがあった。出版社や編集者の求めるところが、私にとって全く興味の持てないところであったので、「書きましょうよ!」などと言われても全く書けなかった。そして書けない人には誘いも来なくなった。書きたい人は無数にいるわけだから、当然のことだった。


入院費用にあてさせていただきます。