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架空書籍紹介(64冊目~70冊目)

64冊目「会いたかった結石」

老人は長年尿路結石に苦しめられてきた。結石はいつまでも出てきてくれなかったのだ。常態化した痛みを、憎むのではなく、抱きしめる方向へと変わっていった。その方が苦しくないのだった。死の間際にようやく出た結石を、彼は抱きしめて眠るように亡くなった。


※結石とのやりとりは恋愛小説集内「私vs結石」に結実。


65冊目「恋愛小説を書きたかった猿」

恋愛経験の乏しいもの書きがいた。彼は経験の乏しさを創作で補おうとした。少年時代に淡い恋愛をしていたことにしようとした。しかし彼はそのような物を一行も書けず、レスラーとコーナーポストの恋愛や、尿路結石との恋愛や、鶏と交わる話を書き続けた。


※この絵に出てくるレスラーとコーナーポストの話は恋愛小説集内「レスラーvsコーナーポスト」に結実

66冊目「僕の好きな錬成」

美術準備室で錬金術の錬成をする先生のことが好きだった。教師としても人としてもやっちゃいけないことをたくさんやっていた先生だった。「人体錬成やっちゃダメだからね」と私に言う割に、自分ではばんばんしているのだった。美術部員はそうして増えていった。


※気付いている人は少ないかもしれないが、忌野清志郎「僕の好きな先生」のパロディタイトルである。


67冊目「ピーチボーイウィズドッグアンドキャット」

桃太郎は鬼退治に行く途中で捨て猫を拾った。段ボール箱にギブソンSGと一緒に捨てられていた。桃太郎が猫を連れて弾き語りをしているとセグウェイに乗った犬が寄ってきた。一人と二匹はバンドを組んで武道館を目指した。鬼は政権を取った。


※「恋愛小説集」で話をあまり関係のない挿絵を追加しているうちに、それらに出てきたキャラが物語を作り始めた。

68冊目「フライングフライパン」

フライパンが飛んでいく。フライパンが群れをなして飛んでいく。渡りフライパンの季節になると、フライパンの群れは一斉にねぐらを飛び立っていく。フライパンの習性を利用して生まれた料理が中華料理である。そうして中華料理は世界中に広まったのである。

※拡大してシロクマ文芸部に投稿。


69冊目「結石ロック」

尿路結石の痛みに苦しむロッカーが「結石こそロックではないか」と気付いた話。代表曲となる「結石ロック」が作られた経緯と、第二弾作成に向け、結石が作られやすい生活習慣を続けたといういかれた話を収録したノンフィクション。ちなみに第二弾は売れなかった。


70冊目「安全怪談集」

全編創作怪談であり、実在しない怖い話を集めた一冊。読んだら呪われるという内容の一編を読んでも呪われないし、ここで書かれた儀式を絶対やってはいけないという儀式をしても悪いことは起こらない。巻末の一編は「安全怪談集」と称した非常に危険な本を書く話。




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