舞城王太郎「淵の王」
各章の主人公を見守る影のような存在が語り手。主人公周辺の人間関係、事件、そしてその最期まで見守る存在。見守ることしかほぼできない存在。「あなたは」と語られるおぞましい事件と展開の数々。
いくつかの恐ろしい場面で鳥肌が立った。一冊前に読んだ「もろびとの空」以来、感受性が最大限に開きっぱなしだったので、読むのを中断しても、一部を思い出すだけでも自在に鳥肌を立てることが出来た。
舞城王太郎の作品を初めて読んだのはもう二十年近くも前のことになる。本能に訴えかける文章を今も書き続けている。まだ若い頃に出会えていてよかった。
話している最中に突如壊れる言語の恐ろしさ。
「もろびとの空」で現実に立ち返った私は、「淵の王」でまた読書を軌道に乗せた。走っているつもりでも歩いているような速度ではあるが、少しずつ前に進んでいる。
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