小島信夫「抱擁家族」(再読本)
初めて読んだ時の状況はよく覚えているのに、内容のほとんどが記憶にない。主人公の妻がアメリカ人と情事を交わしたことがきっかけで家庭が綻びていく……という導入部はなんとなく記憶にあったが、その後の展開は何気なく淡々と書かれているように見えて、その実全ての人が狂っているようにも見えてくる。
本書ともう一冊、多分牧野信一「父を売る子・心象風景」だったと思う。どちらかが読みかけであった。父方の祖父が亡くなった際に病院で読み終えた。二十年ぐらい前のことだ。
「いつ亡くなってもおかしくあ