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M先輩への手紙

「君は本当にいいやつだな。振られたのが君でよかったよ。変に聞こえるかもしれないけれど、俺は君に告白して振られたんだって、誇りにすら思える。」

普段はとても優しくて控えめな先輩が、めずらしく自分の気持ちをはっきり言葉で伝えてくれた瞬間だった。

私はまだ未熟で、きっとつきあったら、カッコ悪いところ、情けないところを知られて失望される。

それにまた別れたよって周りに笑われたらどうしよう。

ぜんぶが怖いから、臆病すぎたから、自分が大事だったから、
踏み込まなかった。

それなのに。思わせぶりな態度をとって散々傷ついたかもしれないのに。

私を怒ることもなく、泣くこともなく、先輩は私に優しくお礼を言ってくれましたよね。


踏み込まない思い出こそ、消えずにずっと残る。


先輩には言わなかったけれど、時々、今でもあなたのことを思い出します。

お元気ですか?

今は連絡先やSNSすら知らないから

ここに手紙を書いてみました。

あなたが何気なく、しかし勇気を持って伝えてくれた言葉は

いつの間にか私の心の引き出しにしまわれていて

忘れた頃に飛び出してきては、私の心を暖めてくれます。

そうしてあなたがしてくれたように

私も言葉で誰かを抱きしめたり、支えたいと思って

この道を歩んでいます。

きっともう覚えてもいないかもしれないけれど。

本気の想い 優しい告白は

何十年も経ってから、私を思わぬ方向に導いてくれたんですよ。

その節は、本当にありがとうございました。

私も、「私に振られたことが誇りだ」というあなたを好きになれた私を誇りに思います。





今日もこの街のどこかで
誰かの言葉が 誰かの背中を押したり
反対に
一生消えない傷を作ったりする。

言葉は生き物。

言葉は凶器。

言葉は魔法。

あなたは、あなたの大切な人にどんな言葉を届けますか?


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