見出し画像

瞬く間。

ある日少女が恋に落ちました。
それは手の届くはずのない、
少女より遥かに遠い存在でした。
その光はどの光よりも優しく、
美しく輝いています。
少女は時を忘れ、
呼吸をすることすら忘れてしまう程
光を愛し、
光と共にいたいと願っておりました。


願ってみては、
少女は自らの存在に絶望します。
あの光のそばへ行くには少女は光にとって
不可思議な存在であるからです。
しかし、少女は飛び降りました。

ただ、"光と共にいたい"と。


少女は海へ堕ちました。
この翼は人間にはあってはなりません。
光と同じ存在に近づきたい。

少女は翼を落としました。

もう二度とあの場所へは戻れません。
翼を裂きながらあの場所での時間を思い出し、懐かしみました。
翼が落ち、少女は痛みで眠ってしまいました。


目が覚めると、
砂浜と大きな靴が目に入りました。 
「昨日の嵐で流されたんじゃないか。」
3人の男性が声をかけます。
その中に"光"であった男性がおりました。
出逢えた事が何よりも嬉しく、
背中の痛みも感じません。

彼は何も知らない少女を心配し、
少女の世話を焼いてくれると
申し出てくれました。


彼との時間は幸せでした。
時間を重ね、彼と少女はお互いが
誰よりも信頼できる存在になりました。
"光"で見ていた時と同じように、
とても温かく優しく誠実な男性でした。

彼は少女に言います。
「君は僕の天使のようだ。」
「僕と一緒に歳をとってくれないか。」


しかし幸せは壊されます。
戦争です。
大勢の人々が命を落とす無意味な作業です。
彼はパイロットでした。
彼が戦争に行き、間もなくして、
彼の戦闘機が海へ墜落したと
知らせが入りました。

2人の家も焼け、全てが消えました。
少女は絶望し、壊れました。

もう彼には会えない・・・
少女は希望を失くしたまま、
この世界に存在し続けなければなりません。

少女は人間ではないのですから。


どれだけの時が過ぎたでしょう。
涙は未だに止まりません。
呼吸をする事すら疲れているのに。

彼との思い出の場所で何度も願いました。
"もう1度彼に会いたい"と。

何の意味もない希望にも疲れ、
死も訪れない自分を憎みました。

すると、どこからか声がかかります。

「やっとみつけた。
君は本当に僕の天使だったんだね。
一緒に帰ろう。」

少女は泣きました。
"また、出会えたね"


彼はずっと少女を探していたのです。
彼にとっても少女は“光"だったのです。

彼は少女を抱え、
光のもとへゆっくりと昇っていきました。



-SakurA-

#SakurA #art #illustration #アート #イラスト #絵 #絵本 #大人の絵本 #空 #海
#オリジナル #創作

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?