、という朝の迎え方
緩んだ蛇口の秒針にしたがって
いつもよりゆるやかな速度で愛し合う土曜朝
でっぷりとした水の実が水面をゆらして
きみにはきみの水が流れている
ぼくの肌でまあるく跳ねる水滴
きみがぼくを好きかなんてどうでもいい
愛なんて仰々しいものはいらない
きみは甘いものが好きだしぼくは柔軟剤のにおいが好きなだけ
きみがミネラルウォーターを取り出してグラスに注ぐ
砂のような細い音 冷たくて優しい
サイゼリアをヤと正したりそんな律儀なところも嫌いじゃない
向かいの家の窓が開く音がして8時だ
午後からまた雨だよ
帰りなとは言わない きみの優しさなのかずるさか
手渡されてきみと同じミネラルウォーターが駆ける
きみに浸食されていたからだがきみで沈没する 重いなあ、この正しさは
何か言いたげにきみがミネラルウォーターを冷蔵庫へ戻すと
二日酔いのほうれん草がぼくと同じ格好で寝ている
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