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コモノート

1.コモノートとは

まずは、タイトルにあるコモノート。はて?と思われる方もいるかもしれない。実際に私も今回書きたい内容について調べ物をしている際に初めて目にした言葉である。

生物学の中に出てくるのだが、何やら難しいことがたくさん書いてあるので超簡単に説明させてもらうと、

地球上の全生物は一つの祖先生物から進化してきたのではないかという考えが広まって、それをセナンセスターとか、プロゲノートとか色々な呼び方で呼ぶらしいのだが、かなりしっかりとした遺伝の仕組みを既に備えていると考えられる全生物の最後の共通祖先を【コモノート】と言うらしい。(はい、もう分からない)

この存在の有無は現代も議論されているとのことだが、うちの旦那さんを見ていると、この存在も信じてしまいそうになるな、とそう思ったわけである。

2.生き物という生き物が

要するに旦那さんはとっても生き物に好かれるが故、
もしや友達?
はたまた知り合いか?
いや、親戚なのでは?
コモノート!?ありえるかも!!
と感じずにはいられないということだ。

動物が大の大好きな私から見ても到底敵わないほどのエピソードを彼はお持ちだ。

結婚当初、彼は虫だけが少し苦手分野であったが、息子たちが食虫にまで興味が湧くほど大好きな手前、今ではなんでも来い…いや、おおよそ来いである。

私の好きなエピソードであるため、これを読んでいただいている方の中には既にご存じの方もいるかもしれないが、それをまた活字で楽しんでいただきたく、そのうちのいくつかご紹介したい。

-----体育の時間にて-----

これは旦那さんが中学生の頃。
その日は運動会の練習の時間だった。
ムカデ競争の順番を待ち、数人で連なって整列していると、背後のクラスメイトがどうもイタズラをしてくる。

前を向いていると頭に指を立てて手を乗せてくる。

「やめろやぁ〜」と振り返れば、友達は目も合わせず知らんぷり。

もう一度前を向いても、やっぱり頭上に違和感のあった彼は、両手で頭上の手を払うようにパタパタと動かした。

すると、彼の頭から一羽の鳩が飛び立った…。

と私は記憶していたので、仕事から帰った本人に確認をとると、

「鳩じゃないで。鳩とスズメの間ぐらいの何かしらの鳥。」

とすごく後味の悪い表現をしていた。

鳥類が羽を休めるほどの気配とは…。

-----近所の公園にて-----

そこは一周2キロほどの比較的大きめの公園で、ランナーも多く、週末になると親子連れやお年寄りの憩いの場にもなるのだが、野良猫がところどころの茂みに潜んでいる事が多い。

時々その野良猫の中でも、一部の人に慣れた子だけがお年寄りとベンチに座っているのを見かける事がある。

当時、旦那さんは高校生。
バイド帰り、ふとその公園に立ち寄り、池の周りの石ベンチに腰掛けたそうだ。

餌も持たない彼の周りに、出ては寄ってくる野良猫たち。ざっと10匹ほど。
あっという間に猫使いと化した彼は、数匹をひと通り撫でて立ち去るのだが、それは彼の寄せ付ける引力なのか種に入りこむ順応力なのか。

-----某動物園にて-----

これに関しては結婚し、子どもたちが生まれてからの事なので、私も実際に目の当たりにしている。

その日は旦那さんの仕事が休みだったので、家族で某動物園へ出かけることになった。

今はもう完成しているのだが、ちょうどその当時は改装途中であったため、見られるエリアも少なかった。

鳥も魚もあっという間に飽きてしまった子どもたちを連れて次のエリアへ行くと、遠くに大きなラクダが見えた。

子どもたちの手を引いて、ラクダの方に向かい、声をかけながらヨシヨシさせてもらおうと思った。

ほんの少し触らせてはくれたのだが、すぐにソッポを向いてしまい、子どもたちもなーんだ、という感じだった。

少し遅れて後ろから旦那さんが登場。
私たちと入れ替わりでそのラクダのところへ。

「……………○×△」と何やら名前を呼んだり、ムツゴロウさん並みの落ち着きで近づいて行く。

すると、さっきはあっという間にソッポを向いて、愛想もそこそこだったラクダがのっそのっそと柵越しまでやってきて、ピタリと旦那さんの顔に鼻を突き当てたのである。
まさにサムネイルの写真がその瞬間であるが、

「ズゥゥゥゥゥーーーー」

大きく深呼吸をするかのように、ラクダはどうやら旦那さんの顎の辺りを匂っている。

「おぉ、ヨシヨシ」

旦那さんも顎に鼻を突き当てられたまま、しっかりと応える。

その瞬間…

バジャバジャバジャバジャーーー!

とものすごい音が聞こえてきた。
ふと目を落とすと、すごい勢いでラクダが放尿している。

それはものすごい量で、ラクダの足元は水浸しになったほどである。

「ウワッ!!!!」

と心の声が漏れたのは私だったが、ラクダの後方を掃除していた飼育員さんが一言、

「わぁ〜!すごい!嬉しい時や興奮した時にオシッコするんですよぉ!」とテンション高めに教えてくれた。

メスラクダに発情される旦那さん。

もうこれは種を超越した神秘。

新たな愛の誕生に立ち会う事ができた奇跡ではなかろうか。

その一件以来、彼はメスラクダのことを「彼女」と言いだした。

妻公認のラマンである。


しかし、それ以来なかなか逢瀬のタイミングが掴めないうちにコロナの時代になった。
園の改装もすっかり終わって、少し落ち着いたころに「彼女」に会いに行くと、二代目のメスラクダに代わっており、ラマンであった先代は大往生の末に亡くなっていた…。

聞くと、その当時はすでにずいぶんと老ラクダであり、かなり長生きだったとのこと。

老婆ラクダの最後の恋が我がパートナーだったかと思うと、切なくも、なんだか悪くない心持ちになるのであった。

3.さいごに

種を超えた何か。

そこには間違いなく互いにシンパシーを感じていることが感じとれた。

全生物の共通といえば大袈裟なのかもしれないが、だとしてもコモノートのような存在は何かしらあるのだろうと、やはり私は頷くのである。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

---おわり---

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