見出し画像

(番外)テレビ局の2Q決算

(追記)TBSとテレビ朝日の決算

すっかり記事を書くのを忘れていたのですが、代わりに動画配信を実施していました。短くまとめた物がありますので、そちらを見ていただけたらと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=fYzaG8G-Om4

テレビ局の2022-2Q決算

 どんこめはテレビ局の決算にも以前から関心がありました。
11/06時点では、日本テレビ、フジテレビ、テレビ東京が決算を発表しています。
 このあと、テレビ朝日、TBS、NHKの決算発表がありますが、NHKは例年ワンテンポ遅れての発表となっています。

 面白いことに、どの会社も増収減益となっています。

・日テレ 増収減益、EPS減。総資産・純資産減。
 通期業績予想を全体的に下方修正。配当は前年同等を予想。
・フジ  増収減益、EPS減。総資産減、純資産増、営業CF増。
 通期業績予想は前回予想を据置。配当は前年より+2円増配実施。
・テレ東 増収増益、EPS増。総資産減・純資産増。営業CF減。
 通期業績予想は前回予想を据置。配当も前年同等を予想。

ここにWOWOWも足してみましょう。

・WOWOW 減収増益、EPS減、総資産増・純資産減、営業CF減。
 通期業績予想は前回予想を据置。配当は年▲10円減配を予想。


まだマシなのはテレビ東京ぐらいでしょうか。
ひどい有様です。

日本テレビ


 本業のTVCMが減収減益という、ひどい有様です。企業としてはまだ黒字を出し続けていますが、テレビCMのビジネスモデルが崩れかかっている兆候と言えるかもしれません。

 地上波テレビ広告収入が前年同期比と比べて約▲70億円の減少です。
 タイム・スポット共に減少し、とくにタイムが▲52億円と大半です。

BS・CS、デジタル広告収入、コンテンツ販売、興行、不動産賃貸収入は増収。物品販売は減収しました。

 メディアコンテンツ事業全体では+21億円の増収ではあるものの、肝心の本業である「地上波テレビ広告収入」だけで見れば、▲6%もの減収です。 
 しかもセグメント利益にいたっては▲64億円、▲27%ものマイナスです。
 これは日テレテレビマン達にとっては衝撃だったことでしょう。

 生活・健康関連事業は増収増益したものの、赤字改善であり黒字化には至っていません。
 不動産も減収減益で、+1.7億円の増収に対し▲0.8億円の減益です。

 全体では+45億円の増収(+2.3%)ですが、▲50億円の減益(▲20.4%)でした。増収よりも倍以上の費用増に苦しんでいるようです。

 流動負債891億円に対し流動資産2520億円で、資金面では余裕があります。(だからと言ってお金をうまく使えているかはちょっと疑問)

フジテレビ


 ある意味今回の中では一番良くないパターンかもしれません。
 本業である放送・メディア収入の内、地上波テレビCMに関しては前年同期比▲60億円・▲7.3%と大きく減少しました。こちらも特にネットタイムで▲35億円・▲9.8%と大きく減少していました。
 インターネット配信系のメデイァ収入は+12億円8.7%の増収でしたが、テレビの減収には5倍ほど足りません。

 特に興味深いのは、電話サービスのCM収入が前年比▲71.4%と大幅に下回っていたことでしょう。一方、交通・レジャー観光は+71.5%と大幅に増加していました。

 番組制作費は前年よりも約▲15億円・▲4.3%減少しましたが、それでも減収が大きく影響は深刻です。

 実は、フジテレビの場合、営業利益まででは増収増益しています。
経常利益・純利益が前年よりも減少しているのは、去年は持分法による投資利益が大きく、今年は半分以下になった影響とみられます。
 それを加味しても、増収よりも費用増が大きすぎますね。

 流動負債1567億円に対し流動資産は3989億円で、資金面では日テレよりも余裕はあります。まさか、現金があるから費用増しても大丈夫という理屈…?
 ある時突然「やばいやばい!」というのが表面化するパターンに陥るかもしれません。結構な爆弾な気がします。問題を放置しているに等しい状況ですからね。

テレビ東京


 今回の中では唯一増収増益している企業です。
 特に、地上波放送事業で増収増益しているのはテレビ東京だけです。
 総資産が少し減っているのは負債を消化したためで、利益自体は増やし続けています。

 営業CFは前年より減少しており、その現象幅が最も大きいのが「その他」というのはちょっと気になります。
 営業CF<投資CF+財務CFで良くない形ですが、投資CFの大半が定期預金の預入による支出となっています。これを無視したらそんなに悪くないバランスです。
 ただ、なぜ80億円も預入?(払い戻し40億を加味しても半分の40億は預け入れてる。)

 流動負債356億円に対し流動資産783億円で余裕はあります。

 さて肝心の本業のテレビですが、やはりこちらもCMは減収です。
 タイムが▲25億円▲10.4%と減収が大きいです。
 ですが番組制作費を▲21億円▲11.8%も削るという大ナタを振るったおかげで、他の増収もあわせて減収量を上回り、+1..9億円+2.7%の増益を実現しました。

 テレ東といえばアニメ。アニメは今年も好調で、+20億円+25.3%と大成功しました。アニメはライツ事業に含まれますが、実にライツ事業の増収の7割がアニメによるものでした。(そもそもライツ事業の2/3はアニメによる売上です)

 テレビ業というのは、本来であれば広告(=CM業)が本業です。
 それを視聴者に見せるため、いかに注目される・視聴率の取れる番組を作れるかが重要です。その意味でテレビ東京は”アニメ”という強力な武器をうまく活かせています。
 放送事業の売上合計が383億円なのに対し、これとは別にアニメが100億円の売上を計上しています。

 とはいえ”本来”の本業が減速してきているのはテレ東も同じであり、たまたま違う武器を持っていたからであることは忘れてはならないでしょう。


WOWOW


 増益だからいいじゃないか、と思う方は注意です。
 減収▲17億円・▲4.3%に対し、営業利益+6億円・+38.6%、純利益+0.3億円・+2.6%といった具合でアリ、なかなかに今後が心配な状況です。

 どういうことかというと、減配予想からもわかるように、営業CFが配当の支払いだけで全部持っていかれる状況になってしまったからです。投資CFに至っては▲9億円弱しかありません。
 減収しているのに増益ということは、収入以外、つまりは費用の削減で利益を捻り出しているわけで、いつまでも何度でも使える技ではありません。
 このまま減収が続けばいつかは限界を迎えることとなります。

 そのために、現状では減配を避けられないのです。
流動負債は241億円、流動資産は614億円で余裕はありますが、利益が20億円前後ですから、かなり心もとない利益水準です。

おわりに

ここから先は

430字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?