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旅する絵本♡が生まれる①

えほん未来ラボ(えみラボ)のドンハマ★です。《ありたい未来を絵本でソーシャルデザインする》というキャッチフレーズで、絵本の活動をやっています。えみラボのチャレンジプロジェクトには、絵本×婚活や、絵本を使った占いなど、ユニークな取り組みがあるのですが、今一番、多くの方々に関心を寄せていただいているのが、旅する絵本♡だと思います。

この旅する絵本♡は、1冊の絵本が人伝に手渡されて行くという流通のしくみの社会実験でもあります。モノとしての絵本がどんどんリレーされていくという現象面での特徴もあるのですが、リレーの際、対話や交流が生まれ、人々がつながるきっかけになっているのも大きな特徴だと感じています。

スタートして、1年あまりですが、これまでに1000冊以上の絵本が、日本中、いや世界中を旅していて、コロナで人の分断や孤立、心の問題などが心配される昨今ですが、旅する絵本♡に参加できて、気持ちが前向きになったという、うれしい感想も各地からいただいています。

今後、この活動をサスティナブルに広げていきたいというのが私の思いですが、旅する絵本♡がどのようにして生まれることになったのか、その経緯を今回はお伝えしたいと思います。

(1)読まれてこそ、なんぼやな。

私ドンハマ★は、旅する絵本♡を始める前の約5年間、おとなの絵本プロジェクトというコミュニティを主宰し、大人が絵本を楽しむ多様な場を作って来ました。まだコロナの蔓延などまったく想像だにできない日々で、リアルなよみきかせイベントを各地で開催していました。共に楽しむ仲間も増え、充実した活動でしたが、違う形で次に進みたいという思いから、2019年11月を持って、私は一線を退き、首都圏でのよみきかせイベントを休止したのです。

「やはり絵本で次に進む」とまでは、決めていたものの具体的なことは、まったくの白紙状態でした。ある時、自宅の本棚の中や、収納しきれず、あふれ出している絵本たちを眺めていたのです。すると、その1000冊あまりの絵本たちが、「ボクたちの出番はもうないの?」と私の尋ねてくるのです。それまでは、時期やテーマにあわせてセレクトして、多いときには30冊くらいを絵本会に、自分で持ち込むこともありました。しかし出番を失くした絵本たちは、なんだか悲しそうにそこに鎮座しているように見えたのです。

確かに「絵本は、読まれてこそなんぼやな」と思いました。私の家に飾られているよりも、いろんな人に読まれた方がうれしいやろうなと。また、次のステップに移るに当たって、自分の気持ちの整理も含め、すっきりしたいという断捨離の気持ちも芽生えていました。そこで私は、絵本を手放すことに決め、その手放し方についていろいろ考え始めたのです。

この手放すということについては、もったいないとか、よく思い切ったことをしましたねという反応をいただくことがあります。自分でも、なんだか惜しいとか、お気に入りでない絵本から手放せばいいとか、いろんな葛藤や邪心が生まれたのは事実です。しかしそのモヤモヤ以上に、旅する絵本♡で何が起きるか見てみたいというワクワクの方が勝ってしまったということだと思います。

(2)レバレッジを最大化する手放し方

最初は、古本屋さんへ売ることも考えました。確かに次の誰かに読んでもらえるだろうと思いました。しかし、それは、私の手元を離れてしまえば、絵本は匿名性を帯びて、私が所有していたという履歴は消去され、第2の(人生ではなく)本生をいきることになります。それは自分の望む方向とは違うと思いました。

同じように、アジア諸国の子どもたちに本を寄附するという選択も考えました。まさにソーシャルグッドなアクションなので、魅力的ではあったのですが、やはり絵本が匿名性を帯びてしまうという点に物足りなさを感じてしまいました。

そこで浮かんだ手放し方が、ドンハマ★発で、人伝に絵本をリレーしていく「旅する絵本♡」の発想です。もし、私の手元を離れた絵本たちが、次々に手渡されて行って、10人に読まれたとしたら、1000冊×10人で、1万冊の絵本が私の家にあったのと同じ価値を生むかもしれない。そうすれば、私自身の積年の願いである「これまで一度も絵本に触れたことのない人や長らく触れていない人にも絵本に触れてもらう」ということも実現できるかもしれないとひらめいたのです。旅する絵本♡こそが、自分が所有する絵本1000冊をもとに、レバレッジが最大化する手放し方だと確信を持ったのでした。

また、過信と言われることを恐れず言えば、《ドンハマ★発》という要素もひとつのブランド価値になりえるだろう、つまり受け取ってみたいと思ってくれる人も初期の段階では、それなりに居るはずだと考えたのです。

(3)英国の青年の頓挫

このアイデアを図書活動に長らく関わり、いろんな知見をお持ちの方にどう思うかと投げ掛けてみたことがあります。その方は、アイデアとしては、おもしろいと思うけれども、英国のある青年が同じような考えで、本を人伝に渡していくという仕組みにチャレンジしたのだけれど、途中で頓挫したという話を教えてくれました。

それは、絵本ではなかったようなのですが、途中でリレーが途切れてしまったということなのです。原因は、本を渡された人が本をなかなか読み切れないなどの理由で、次へのリレーをストップしてしまったことにあるようでした。

なるほどなぁと思いました。確かに人から本を託されるというのは、プレッシャーになる可能性はあるなぁ〜と思ったのです。実体験でも、次に会ったとき、あれ読んだ?とか訊かれたらどうしよう〜とかドキドキしたことが自分も何度もありましたから。

この問題そのものは、解決するのは難しいと思いました。旅する絵本♡でも、ロスと言いますか、旅を続けられなくなる絵本はある程度、発生するだろうと思いました。ですから覚悟するしかないなと思いました。

一方、絵本は、一般書と比べれば、読む時間や圧倒的に少なくて済みます。どこかに滞留するというリスクは、相対的には低いと推察できると思いました。

いろいろ課題は起きるだろうが、旅する絵本♡という《新たな流通のしくみ》が社会に受け入れられるのかどうなのか?実験してみたいというどんどん気持ちが強くなったのです。つにには「旅する絵本♡をやるべし!」の一択が残りました。

やると覚悟を決めれば、あとはどのようにやるのか?どれくらいやるのか?の算段をつけていくことになります。それもやるなら一過性ではなく、サスティナブルに続けていくという視点から計画を詰めて行くことになります。それについては、次回お伝えしてみたくと思います。


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