旅する絵本♡が生まれる②
前回は、旅する絵本♡をやる!と決めるまでの経緯や葛藤などについて書きました。今回は、実際にどのようにやるのか?どれくらいやるのか?について、私が何を大切に考えたかをまとめてみます。
(1)どのようにやるのか?
旅する絵本♡がうまくいくかどうかの分岐点はは、絵本がひとつのところに滞留せず、次の人に手渡っていくかどうかということに尽きます。そこで、①絵本を手渡していくということにワクワク感や楽しみを感じる工夫と、②ひとところ(例えば自宅のどこか)に置いておくことに少しプレッシャーを感じる工夫と、2つの方向があっていいと考えました。
手渡すワクワク感ということで言うと、私が想起したのが、自分の小学生の思い出です。図書館で借りた本の巻末にブックポケットがあり、そこには図書カードが入っていて、いつだれがその本を借りたかが一目でわかるのです。こんなに借りてる人がいるんだとか、この本は自分が一番目だとか、友だちの〇〇君も読んでいるとか・・・。本の内容とは別のワクワク感がありました。ですから、その図書カードに、好きな異性の名前を発見したときのドキドキ感は言いようのないもので、そういう仕掛けを旅する絵本♡でもしてみたいという思いが湧きました。
旅ですから、やはり宿の台帳みたいなものがあってもいいはずと、「旅する絵本♡台帳」と名付けたカードを入れることにしました。そこには、日付と愛称と居住地、そして一言感想やメッセージが書けるようにしました。もちろん、あの懐かしいブックポケットも必要だと思いました。
次に考えたのが、ひとところに置いておくことにプレッシャーがを感じる部分も必要だというです。
私も本を借りることがありますが、個人から借りるより、図書館から借りたときの方が、その本を早く返さないといけないという意識が強くなる気がします。それは、返却期限があるということもありますが、〇〇図書館というシールが見えるところに貼ってあることもポイントのような気がするのです。
そこで、これは「旅する絵本♡」なんだよ~とはっきり区別できるような専用シールを表紙に貼ることにしました。正直に書くと、表紙の半分くらいが隠れるようなタテヨコ10㎝くらいのものをドカーンと貼ろうかと最初は思ったくらいでした。
旅する絵本♡の装丁を行うようになってみてですが、表紙は作品の一部でもあるので、シールで隠してしまうということが、かなりの背徳感を生むということが、わかってきました。10cm四方にしなくて良かったと心から思います。結局シールは、私の描いたイラストをデザイン化して、5cm×5cmのものを作りました。
それ以外には、旅する絵本♡への思いやしくみをお知らせする用紙を、絵本の見返し部分(表裏それぞれの表紙の背面)に貼るようにしました。見返し部分にも、絵本の世界観を表現していたり、重要な情報が載っていたりすることが多いので、用紙を貼ることに躊躇する場合もあるのですが、悩みながらやっています。
見た目には「旅する絵本♡」であることが、はっきりわかるような工夫になりました。
《参考動画》YouTube おいしい旅する絵本♡の作り方
(2)どれくらいやるのか?
目標設定するとき、ストレッチゴールという考え方がありますが、少し背伸びしてなんとかできるかな~と思えるくらいの目標数値をイメージします。それも、自分一人でもなんとかするという前提で考えるようにしています。
「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」という名言もあり、その通りだなと思うのですが、初めから誰かの力を借りる前提で考えてしまうとイメージ通りに進捗できないとき、仲間への不信不満をつい感じてしまう。自分のそういう性格がよくわかっているので、まずは自分一人でできる最大パフォーマンスはどれくらいかをイメージするのです。この場合の前提条件は、時間面やコスト面も含め、考えて行きます。
旅する絵本♡の場合、約1000冊の絵本にオリジナルの装丁を加えて、それを誰かに手渡していくことになります。手渡し方法は、まだ検討の余地がありそうだけど、手渡し中心で行くとして、年間約300冊くらいが限界かなと思いました。つまり3年掛けて我が家の絵本を旅立せれば良いのではないかと考えたわけです。
その3年の中で、状況はいろいろ変わるでしょうし、旅する絵本♡が価値あるしくみに成長するとすれば、よりサスティナブルに続ける方法を模索できるだろうと考えました。
(3)満を持してスタート
もうここまで来たら、とりあえず実行に移すしかありません。旅する絵本♡シールを2,000枚、旅する絵本♡台帳を1,000枚、ブックポケットを1,000枚、どーんと発注しました。台帳については、少しでもコスト抑制と、定型サイズで発注したため、結果、ブックポケットの幅と同じになってしまい、出し入れする遊びの余裕がまったくなくなっていました。これは発注時にわかっていたことではありますが、現在、装丁作業の時には、台帳の幅を左右数ミリずつ手作業でカットするという古典的な作業まで必要となっています。
《参考データ》シール2,000枚18,447円、台帳1,000枚5,005円(以上ラスクル)、ブックポケット1,000枚9,537円(Book Buddy)
2019年の年末から、友人知人に少しづつ手渡したり、いろんなイベントに参加して、テスト的に広めて行きました。本格的なスタートとしては、「旅する絵本♡夜会」という、よみきかせも交えたオリジナルイベントを開催しました。
旅する絵本♡を手にした方の中には、旅リレーのわくわく感をフィードバックしてくださる方や、次の方へリレーを早々にしてくださる方も現れて、2020年1月現在で、ドンハマ★発の旅する絵本♡を約50冊、旅立たせることができていました。
2020年1月開催 第1回旅する絵本♡夜会 東京・吉祥寺(バツ4ビル)のブックマンションをお借りして、開催しました。
順調にスタートした旅する絵本♡でしたが、すでに新型コロナの足音が直前まで、迫ってきていたのでした。もちろん、この時点では、まったく予期していませんでした。新型コロナは、旅する絵本♡の方向性も大きく変えていくことになりますが、それは次回、お伝えしたいと思います。