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人生に一度だけ、絵本に出会ってほしい

1)ドンハマ★と絵本の出会い

私は、今、ドンハマ★という名を語って、子どもというよりは、どちらかと言えば大人向けに様々な絵本活動をしています。それは、絵本というものとの出会いが、人生を豊かにするという自分の体験に基づいて、多くの方々にもそんな体験をしてもらいたい一心で、かれこれ6年以上、活動を続けているのです。

絵本との出会いというと、幼少期というのが、一般的には浮かびやすいイメージですが、私の場合は、絵本とはまったく縁がない幼少期でした。親からよみきかせをしてもらった記憶はまったくありませんし、小学生になると〇〇全集的な本を買い与えられて(ほとんど重厚な箱に入ったままでしたが)、絵本がそこに入り込む余地はまったくなかったのです。

なので、自分が大人になって、40歳を過ぎて子どもが生まれ、子育てというものに関わるようになるまで、絵本というものに触れる機会はほとんどなかったのです。もともと学生時代には、演劇にのめり込み、役者をやったりしていましたので、自己表現には興味関心があり、絵本という道具を与えられて、眠っていたパフォーマーとしてのフタが、ぱっと開いたような感覚はあったと思います。

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また、初めての子育ての中で、パートナーも日々、手一杯の状況で、自分もあたふたしながら過ごす中で、絵本のよみきかせという役割を与えられ、それを免罪符的に受け入れて、心の安定を図ろうとした自分もいたのだろうと思います。

そして、いろんな絵本に触れるにつけ、どんどんその深淵な世界(これを「沼」と表現する人もいます)にのめり込んだというのが今の私だと思います。そういう自分を振り返って思うのは、もっと早い時期に絵本に出会っていても良かったし、同じように絵本にまだ出会えていない人、あるいは絵本にご無沙汰している人が、あらためて絵本と出会える場や機会を創出したいということです。

2)人生に3度絵本に出会うという考え方

ノンフィクション作家の柳田邦男さんは、絵本の普及活動でも著名な方です。絵本活動をしている私たちにとって、特別な存在だと言っていいと思いますが、その柳田さんが提唱する「人は、人生で3度絵本に出会う」という考え方に、共鳴・共感する方は多いと思います。

2005年6月7日読売新聞掲載                      心の豊かさを耕すために~いま、大人にすすめる絵本~
◆対談/柳田邦男氏&谷川俊太郎氏◆より               (柳田)私は、常日頃から「絵本は人生で三度読むべき」だと提唱しています。幼い時、親になった時、人生の後半に差しかかった時です。読み返す度に新鮮な感動を呼び覚まし、心を豊かに耕してくれる。いつしかそれが“座右の絵本”となり、心の持ち方や想像力を取り戻す手助けをしてくれるでしょう。
(谷川)絵本は決して子供たちだけのものではないということですね。
(柳田)深く味わいのある絵本は、何度読んでも色あせることがありません。親から子へ、孫へと読み継がれていくと、すばらしい家族の文化が生まれます。                             《参照URL》https://www1.e-hon.ne.jp/content/yomiuri_taidan_050607.html

柳田さんは、ご子息の死と向かい合うという壮絶な体験の中で、絵本の深淵な世界に触れ、①幼少期(子どもとして)②子育て期(親として)③子育ても終わって人生の後半の3回絵本と出会うべきだとおっしゃっています。もちろんこれは、人が絵本に触れる機会というものをひとつの例として表現されているわけですが、絵本と人との関係性を端的に表す考え方として、私自身もとても感じ入る部分があります。私の場合は、②と③が重なりながら、絵本と出会っているケースになるわけですが(笑)

3)絵本の空白期間を埋めたい

人生の中での絵本の出会いを改めて整理すると、小学生くらいまでは、学校などでもよみきかせ活動があったりして、比較的、絵本を身近に感じやすいのではないでしょうか?しかし、絵本が、赤ちゃんや小さい子ども向けの本というイメージが強いこともあるわけですが、多くの子どもが小学校高学年や中学校くらいで、絵本から卒業していくわけです。

その結果、若者としての多感な時期も、社会人としていろんな課題や悩みに直面する時期も、絵本とは縁遠い生活を送ることになるわけです。その後、人によっては、子育てや就く職業によって、絵本とのかかわりを取り戻す人もいるわけですが、そうだとしても、10~20年以上という大きな「空白期間」がそこには生まれます。それがなんとももったいなく私は思うのです。なんとか、この空白期間を埋めることはできないでしょうか?

人生の中で絵本に出会うイメージ

4)デスクの下には、絵本が一冊

もちろん、絵本は人生のすべてではないし、すべての人が本棚に絵本をずらりと並べる、そういう暮らしをすべきだと言いたいわけでもありません。

しかし疲れたときに、ちょっと遠出して自然に触れたり、温泉にのんびりつかったり、懐かしい曲を聴いたり、少し贅沢なランチを食べてみたり、日常とちょっと違う行動を起こすことで「自分らしさ」を取り戻す経験を多くの方がされていると思います。絵本が、そんな選択肢のひとつになってくれると良いなぁと思います。

会社のデスクの下に、絵本を一冊しのばせて、ちょっと疲れたらおもむろに開いてみる。パラパラっとめくったり、黙読したり。そんなことをしてるうちに、頭はすっきり、心はほっこりする。そんな体験を私自身、何度もしているのです。きっと、コーヒー好きがカフェで一息ついたり、スモーカーが一服吸いに行くのと同じようなものだと思います。

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《イメージ デスク下の絵本》                     「ぐるんぱのようちえん」作:西内ミナミ  絵:堀内 誠一  (福音館書店)

そのためには、この10代後半~30代前半に訪れる「絵本の空白期間」が生れにくくなる環境、風土、習慣づくりが大切だと思います。決定的なアイデアまでは、まだ浮かんできていませんが、えほん未来ラボ(えみラボ)で取り組んでいる「えほんうらない」や「婚活×絵本」、そして「旅する絵本♡」などの企画は、ユース世代が絵本に触れるしくみのひとつとして、更に活性化させたいという思いでいます。

人生に一度だけで良いから、みんなに絵本と出会ってほしい。願わくば、その一度の出会いが細くともずっと途切れず、その人の元気や癒しの素になる、そんな存在に絵本がなってほしい。それは、えみラボやドンハマ★の切なる願いでもあるのです。





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