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【漫画感想】「アル中ワンダーランド」まんしゅうきつこ(まんきつ)

私は、古くからの知人がアルコール依存症を患ったことをきっかけに、好きだったお酒が飲めなくなりました。その辺のいきさつは長くなるのでまた機会があれば書こうと思います。

その知人の無様な様子を見るにつけ、なんとなくアルコール依存症に関する本や記事が目につくようになり、専門的なものからエンタメ作品まで色々と目を通すようになりました。

笑っていいのか悪いのか…?

これはまんしゅうきつこさんという酷いペンネーム(笑)の漫画家さん(現在は「まんきつ」に改名)の描いた、アルコール依存症当事者の体験エッセイ漫画です。

コミカルな絵とノリの良さで笑ってしまいますが、笑ってる場合ではないほど、客観的に見ると病状は進行しているのがどのエピソードからもわかります。

依存症は、脳がコントロール不能に陥る病です。最近では、「依存症」ではなく「コントロール障害」と病名を変える動きもあります。なにも意思の弱いだらしのない人だけが依存症に罹るのでなく、習慣化した嗜癖によって脳が萎縮し、自分の意思では生活そのものがたち行かなくなり、それでもやめられなくなる、そんな進行性の脳の病です。

やはり当事者は気付けない(病気を認めない「否認」という状態)のがこの病気の典型的な症状ですが、作中でも
えっこのぐらいでアル中?
 じゃあ世の中の酒好きはみんなアル中では?

という診察室でのやりとりが出てきます。こういったやりとりは、酒好きの人ならかかりつけ医と定期的に交わしますね?w

医師に指摘されても、本人は認めようとせず飲酒量を少なめに申告したり、「まだ自分は大丈夫」と根拠なく自信満々だったり。これを「否認」といい、アルコール依存症に罹った脳(もしくは罹りつつある脳)が、全力で理性を騙し、誤った舵とりをする状態です。アルコール依存症は「否認の病」とも言われます。

作者さんは数々のやらかしの末に治療に繋がり、現在はお元気そうでよかったです。文中の端々に、再飲酒しそうな気配を感じて(発売は2015年)ドキドキしますが…。

今回私が読んだのは改訂前のものでしたが、新しい文庫版だと後日談や本人による解説が追記されているそうです。そっちのほうが面白そうですね。

本当に笑っている場合ではありません。…でも、おっぱい出したのは良かったと思う!

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