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哀しき脱皮。

憧れは孤独だった。あらゆる組織から一歩引いた立場で、行き先の決まっていない渡り鳥のように悠々と、時間の主導権を掴むことに憧れていた。誰にも使われず、ただ自分の思うままに生活がしたかった。僕はそれだけを目指して、生きていた。

それは、孤独だった。憧れは叶ってしまえば急速に単調なものへと移ろい、喜びだと思っていたものは喜びであったものに過ぎなかった。僕はその過程を考慮していなかった。その間、脱皮をするように自分が組成され直すことを見落としていた。僕がかつて憧れていた状況は、孤独に苛まれる日々だった。

多くの人は僕に不幸の外注をした。僕は多くの人が積極的に捨てるものを、それが腐りきるまで掌に収めていないといけない。多くの人が忘れてしまう悔恨を、いつまでも、まるで白痴な牛みたいに反芻し続けなければならない。しかし、それはかつて僕が望んだことだ。ゲームみたいに、リセットすることはできない。人生は脈々と続いているからだ。過去の自分に呪われる状況は、地獄以外にあってはならない。

咳をしても、二十億光年が経過しても、僕はずっと独りだ。

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