幸せのカバ。
神様はカバが気に入った。
「願いをひとつ、言うがいい」
脳みそに直接語りかけられても、そのカバは落ち着き払ってた。神様は気が短いので、無言をつらぬくカバに痺れを切らした。
「おい、願いをひとつ言うがいい」
しかし、カバは返答をしなかった。優雅に泳ぐカバに、神様は苛立ちを隠せなかった。
「おい、早く言いやがれ」
神様は意地悪に、カバを瞬間移動させた。高速道路、線路、キラウエアのてっぺん、ありとあらゆる場所に移動させカバを揺さぶった。しかし、カバの安寧は乱れなかった。
「おい!おい!おい……」
蔑ろにされた神様は徐々に萎んでいき、やがて消えてなくなった。カバは1度だけ鼻息を鳴らして、その業績を誇ったが、すぐに川へ帰っていった。
このようにして、悪神に支配されていた現代は幸せの時代へと変遷した。もしカバ以外の動物が選ばれていたら、地獄はまだ続いていたのかもしれない。