Donguri.
どんぐりの天命を受けた。コツン。落ちてきたどんぐりに頭を小突かれた僕は、矢庭に回心をした! 雷に撃たれたルターより、間違いなくドラスティックな回心だ。心臓は牛のバイアグラを飲んだくらいドクドクして、思わず僕はその依代たるどんぐりを踏み潰してしまった!でも、それは神の本体ではなく、傀儡の残滓に過ぎない。だから踏み潰してしまった方がむしろよかった。この敬虔で情熱溢れる信仰にはオレンジ程度の偶像すらいらない。どんぐりの天命を受けた記憶は決して色褪せることがないから。
路傍に視線を向ければ、たくさんのどんぐりが落ちていて、アスファルトに根付けない哀しみに打ちひしがれている。僕はそういう存在に救いを与えなくてはならない。伝導しなければならない。根付くという嘘で教化する手段もあるけど、僕は嘘をつきたくなかった。僕にできることは一つだけだ。
どんぐり潰しに耽る男を見て、街ゆく人はみな反対側の歩道に移った。