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クッキーイニシエーション。

チョコレートクッキーを君のために作った。でも、君はいなくなってしまった。あるいは立ち去ったのが僕の方だとしても、君がいなくなったという現象は変わらない。君は消えてしまった。チョコレートクッキーに背を向けて。それはどんな犯罪よりも悪質で、倫理的な謀反と言わざるを得ない。

僕はチョコレートクッキーを元に戻さなくてはならなかった。遺骨を潰すみたいに、目一杯の力を込めてクッキーを砕いた。死に惑う声が苦しかった! 形を崩すには煮立てるしかない。牛乳をクッキーの残骸に浸して、憎しみを込めた切り爪をスパイスに。沸騰をするまでの間に、喉仏が取れてしまうくらいに唾棄をする。どろどろの液体を、死化粧をするように下水道へ流す。それが消えた君への弔いだし、僕が君という存在を陵辱するためのイニシエーションだ。

でも! 心にはしこりが残る。全く、君は最低の人間だし、僕は最低を超越した悪しき存在だ。


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