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耽酒。

「恋と酒は、分けておくのが賢明だよ」

先輩は僕にそう諭したことがある。先輩は上手に年を重ねていた道すがら、トラックに轢かれた後にタンクローリーに潰されてしまった。

「恋はしらふに酒はつまみと、だね」

後から振り返ってみれば、先輩の微笑みは薄幸だった。不遇の死を遂げた後、想像の中でも生き生きとすることは難しいのかもしれないけれども。

僕はその言葉を時々思い出していた。しかし、その意味を知ったのは、泥濘に足を取られて暫くしてからのことだった。僕は空瓶の集積に囲まれて初めて、自分がその箴言を蔑ろにしていたことに気付いた。

「じゃあ、バーは何のためにあるんですか?」

僕はその時、先輩に尋ねた。

「弱さを認めているのもまた、人間の素敵な能力の一つなんだよ」

僕は自分の弱さを慈しもうと思った。しかし、肝臓が重くて気が散った。蕁麻疹が痒かった。

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