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アイリッシュコーヒー。

今朝は今年一番のアイリッシュコーヒー日和だった。飲みさしのバスカーの状態はよかったし、エルサルバドル産の珈琲豆は開封したばかりだった。そして、何より部屋は冷えきっていた。氷点下から吹き込む風が、網戸を縫って部屋に寒気を届けてくれた。こんなに全てが噛み合うことってなかなかない。僕は目が覚めた瞬間から、胸の高まりを抑えきれなかった。

布団を剥がすと、鳥肌が一斉に繁茂する。けれども、ここは我慢の時間だ。僕は裸のままで下拵えを始める。(言うまでもないけれど、僕は生粋の服嫌いだ)弱火をやかんにくべている間に、ミルで豆を挽き、ペーパーフィルターをドリッパーにセットする。少量のお湯でマグカップを温めながら、時間をかけて豆を蒸らしていく。興奮を何とか押しとどめながら、じっくりと作る。そして……僥倖! バスカーを勢いよく注ぐ。これに勝る幸福なんて、僕は見当もつかない。

アイリッシュコーヒー日和は稀にしか訪れないから、大切にした方がいいと僕は思っている。

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