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フライト。

なんとなく、長く感じる60分だった。なんとなく憂鬱だった気もするし、なんとなく幸福だった気もする。そういうフライトだった。そもそも、印象に残るフライトなんて存在しないのかもしれない。わりに楽しみにされる事が多いのに、それって何だか切なくなる。でも、その切なさはすぐ忘れてしまう。数多の人類が焦がれ続けた夢も、叶ってしまえばその程度の存在になってしまう。宇宙旅行も時間旅行も、そのうちそうなってしまうと思うと、なんとなく寂しい。あぁ、なんとなく頭が痛くなってきた。

フライト中、僕は気まぐれに小説のページを繰ったり、うたたねをしたりしていた。そのうちガタンと機内が揺れて、僕は目的地の空港に運び込まれる。機内モードを解除すると、なんとなく現実に帰ってきた実感がある。まるで、空の上が全て夢だったみたいに。もちろん、あの機内の不確かな時間も現実だとは思うんだけど、何となく地上とは違う気がする。

それにしても地上は暑すぎる。なんとなく、それは間違っている気がする。

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