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吹雪。
吹雪が僕のマフラーを奪った。僕はそれを掴もうとして、さしていた傘を手放してしまった。マフラーは龍のように空に舞い、傘は行き場を失った車輪となって道路に放たれた。僕は同時に二つのものを失って、唖然としていた。
吹雪は僕をも奪おうとする。つむじ風が僕の踵をすくい、みぞれ交じりの雪が僕を嬲る。言葉でも僕を誘惑する。あたし、悪くはないわよ。あたし、嘘が上手だよ。あたし、駆け落ちたいわ。
僕は吹雪の只中で、歩を止める。マフラーも傘も僕も、すっかり見えなくなったようだ。
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