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結婚式のソテー。

結婚式の参列者は、僕一人だった。

「牧師役も、お願いできればと思うんだけど」

友人から出し抜けに告げられて、僕は首を傾げざるを得なかった。友人は多少個性的なところはあったが、変に気をてらうような性格ではなかったし、結婚式の段取りはとてもオーソドックなものだった。僕は予告された日取りに余裕を持って有給を申請し、少し高価なスーツを仕立てて来た。

「別に断る理由もないけどさ」

「助かるよ……彼女の強い希望でね」


彼女はシェフになって、友人に鹿肉のソテーを振る舞った。とても高価なブルゴーニュワインでフランベをした、結婚式のソテーを。

「結婚式は五番目の友人だけを呼んで欲しいの」

「五番目?」

「そう。何の順番かはあなたに任せるわ。そして私はとっておきのソテーを……」「ちょっと待って」

僕は遮ろうとしたが、彼女はオルゴールの人形みたいに止まらなかった。

「あなたの五番目の友人に振る舞うの。それが、結婚式のソテーの決まりなの」


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