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アット・ラスト。

目が覚めると、彼は花束になっていた。


悪い冗談みたいな彼の部屋で、彼が成り果てたと思えるものは花束しかなかった。溢れんばかりのものが同居する部屋は、その事実を揺るがすくらい整頓されていて、例えば彼が何かに置き換わるという状況の対象はたくさんあった。でも私は、彼が花束になった(吸い込まれた、という表現の方が正確かもしれない)ことを、ある意味では確信していた。花束の出で立ちに、入魂のしるしをありありと感じ取ってしまった。

「もう、戻らないの?」

もちろん返答はない。彼は本来花束であって、彼の姿自体がかりそめのものだったのかもしれない。沈黙にはそういう含みがあった。

「水をやらなければ……」

日々は振り替えってしまえば全て泡沫で、そこに実体がなければ認識することができない。たとえ私が愛したものが初めから花束であったとしても。

「水をやらなければ、枯れてしまうんだね」

私は彼の部屋を跡にして、二度とは戻ることがなかった。


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