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會田。

會田はベッドと床の隙間でしか眠ることができなかった。


「今日も寝られないの?」

會田は自嘲の微笑みを浮かべながら答えた。

「いつものことだよ」

會田はとても常識のある人間であるから、誰に対しても本当の理由を打ち明けることはなかった。會田自身も、よもや自分がそのような奇行に耽溺するとは考えていなかった。會田は元来誰よりも真っ当でいたいと思う人間だったからだ。

「思い詰めないことだね……枕の向きを変えたり、寝る場所を変えてみたり」

會田が願うのは、彼女がベッドの下を覗き込まないことだった。そこには、眠っている痕跡があるからだ。あるいは、會田の奇行に彼女は気付いているのかもしれない。寝不足の脳は思考を胡乱なものにする。

「キッチンで、眠る人の話もあることだしね」

「じゃあ、どこで寝ればいいと思う?」

それは害のない質問に過ぎなかった。しかし。

「例えば……ベッドの下、とか?」

會田は身の毛がよだち、大きな欠伸をした。




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