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寓話F。

鮭は、同志に問う。

「どうして、海に残っちゃ駄目なんだろう?」

汽水域まであと1海里ほどだ。本能に導かれた集団は、長く苦しい逆流にひた向かっている。

「ふるさとが良いじゃないか」
「そんなこと考えても仕方がないよ」
「みんなで向かっているから」
「何となく」
「それって、俺達に失礼じゃないか?」

鮭は思い切って集団を抜け出そうとする。しかし、中心的な立場にいたから、その密集から抜け出すことができなかった。

熊は冬眠中に夢を見た。ある鮭が遡上を止めてしまうと、一匹また一匹と集団は逆流を止めてしまった。熊は一匹も鮭のいない川のほとりで飢え死にをする、そこで目が覚めた。熊は酷い悪夢に喉が乾いたが、外は寒すぎるのでもう一度眠った。


教訓:偉大なる伝統は、偉大なる革新者をたやすく淘汰する

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