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少年茸。

ヒトタケは麻や葦の付近に自生する、とても稀少なハラタケ類に属するキノコだ。人間の主に少年に擬態したキノコで(その理由はおろか、ヒトタケが毒キノコであるかどうかすら我々は知らない)、触れようとすれば忽ちに瓦解する。(ある植物学者は熱に非常に弱いことしか考えられないと言い捨てたが、真夏でもしゃんとしている)

幻覚作用は持たないと類推されているが、多くの人は幽霊なり亡霊なりと勘違いをして、発狂をする。ヒトタケに触れた人は一人もいないのに、ヒトタケを見て死んでしまった人は少なくない。ヒトタケが擬態する少年は決まって不思議な表情を浮かべていて、その不気味さがより人の心を拐かしている。

ある者はヒトタケを宇宙からの使者であると礼賛し、ある者は呪いの総体として忌み嫌っている。我々はヒトタケのその姿しか知らないが、ヒトタケの方は我々のことを随分深く知っているのかもしれない。

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