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偶然。

夜道、缶チューハイを気持ちよく傾けて上を向いたら、ちょうど窓から人が落ちてきた。ストップ! なんと、そこで時間が止まってしまった!

僕は考える。どうして、時間が止まったんだろう? 脳が死を自覚して、限りなくゆるやかに事象を認識しているのか、あるいは本当に時間が止まってしまったのか。でも、少なくとも思考はこのように続いている。少なくとも僕は、考えることができる。

走馬灯。僕は思い当たった。死ぬと仮定すれば、それを見なければもったいない気がした。例えば、この瞬間に突然時間の流れが元に戻ったら、あっという間に僕は死に向かう。美しい過去を思い返すいとまもない。それって、不平等な気がしてならない。僕は走馬灯を再現しようとする。これがすごく難しい。落下する人の悔恨に満ちた表情とまみえながら、楽しい思い出を再現することは僕にはできない。はぁ、呆気ない人生だ。

でも、時間はなかなか元に戻らなかった。時間は止まってしまったから、体感の長さも把握出来ない。でも、多分すごく長い時間だ。思考も疲れたし、そろそろ眠りにつこうと思う。それは多分、とても長い眠りになるんだと思う。


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