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美容師からの手紙。

頭蓋骨が好きな私は、その必然として美容師になりました。

頭蓋骨が好きってのは、何もグロテスク(もちろん、その尺度は人それぞれだと思うけど)な意味ではなくて、例えば理科室にたたずむ標本に対して人並み外れた好意を抱いているわけではない。私は頭髪越しに、生きた頭蓋骨に触れるのが好きなの。頭皮を揉んで、存在を主張してくる頭蓋骨の声が好きなの。だから、その選択肢としては美容師が一番妥当だった。

顔の造形が千差万別のように、頭蓋骨の質感や声は文字通り同じものが一つもない。毎日新しい頭蓋骨と出会い続けられる(びっくりすることに、同じ人でも頭蓋骨は変化をするの)この職業は、私の天職だ。

もちろん、私は頭蓋骨が好きで美容師になりましたとは言わないし、頭のマッサージをする時に不敵な微笑みを浮かべたりはしない。私の幸運な所は、欲望を最低限押さえつける社会性が備わっていたことだ。ママとパパには、頭が上がらないわ。

P.S. それじゃあこの手紙は?と聞かれても困るわ。手紙ってそういうものじゃない。


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