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霹靂。

うっかり、裸のままで外へ出てしまった。もちろんそんなことすべきではなかったけれど、連日の酷暑で部屋ではいつも裸だったし、一人暮らしに慣れすぎたせいでその違和感も無くなっていた。僕は共用扉を開けて、その向かいに植えられている桂の木とまみえたことで、自分が裸であることを思い出した。もちろん、ある一人の通行人に僕の性器は認められてしまった。

僕は破れかぶれになって、その人に向かって駆け出した。よもや、これは夢なのかも知れない。そのような自信が徐々に揺るぎないものに移り変わっていって、僕の横暴な切り替わりは事実として刻まれる。僕はその人をなぶり、挙げ句の果てに小便をかけて奇声をあげた。僕はそのようにして自我を失った。今このように振り返られているのは、多分僕が木々の一つになったからだ。


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