パーフェクトガム。

彼はいつもくちゃくちゃと、まるでその咀嚼音を周囲に誇示するみたいに、ガムを噛んでいた。

「これで、事足りるんだよ」

パーフェクトガムはその効能に反して、採用したのはいわゆる数寄者ばかりだった。多くの人は一度試して、噛むことを辞めてしまう。フレーバーのバリエーションがあれば状況は幾ばくか変わったかもしれないが、製造元の会社のポリシーは、余りにもラディカルだった。

「そんなに、食事が楽しいのかい？」 

パーフェクトガムを噛む人は、例に漏れずこのような物言いをする。それが友人であったことに、僕は真剣に懊悩した。悩みすぎて食事が喉を通らなかったけれど、パーフェクトガムには逃げなかった。

「僕は、君がくだらない咀嚼をしている時間を、とても有意義に過ごしているんだよ」

つまり、有意義という言葉に、本質的な意味はないのだ。僕はそう思ってならない。