蝿。
私は生ゴミにたかる蠅なんだ、と思った。彼は正真正銘の腐った蜜柑で、そんなことは匂いからも見た目からも分かりきっているのに、私はそれにほいほいと飛びついてしまう。それは私の弱さというより、私の宿痾だ。腐敗した彼を憎しみの対象に祭り上げるのは簡単なことだし、そうすることが一般的な消化の仕方だとは思うんだけど、私はさっき、すごく腑に落ちた。
彼にそういう話をした
「君は、横光利一的な蝿になれるよ」
「そうしたら、あなたは落ちる側ね」
「腐敗物は、堕ちた方が摂理にかなっているよ」
暫くは習性に従って彼にたかるだろうけど、その時が来たら私は誰よりも鮮やかに飛ぼうと思う。
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