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リス男。

男はリスを心底羨望していた。

「リスにでもなりたいよ」

男は酒を飲むと決まってその願望を口にするから、周囲からリス男と揶揄されていた。(といっても、男はとても人が良かったから、それはとても好意的ななじりだった)


ある朝、男は啓示に似た夢を見た。

「リスになるにはね」

ナレーションのように聞こえる声には聞き覚えが無かったが、その発話者の顔は男の小学校の同級生だった。(それも、一度も話さないまま転校をした、名前を覚えていない同級生の)

「どんぐりを口と尻の穴いっぱいに入れて、あじゃぱあと叫ぶんだ」


缶チューハイを片手に千鳥足で歩いていると、男はクヌギの木に衝突をしてしまった。

「おおい!」(男は一人になると、虎になった)

その眼下には、たくさんのどんぐりが落ちていた。

「あじゃぱあ」

夜半、男は完璧なリス男になった。


「なんだ、あの化け物は……」

通報を受けた警官は狼狽した。その見た目は確かにリスに似ていたが、その体躯は熊のように大きく、クヌギの木をガリガリと齧る音は断末魔に近かった。



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