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訃報。

彼はいつも喪服を着て出勤をしてきた。

「どちらが先だったかは、もう分からないや」

彼の薄幸な立ち振る舞いは、僕にある種の安らぎを与えた。だから僕は、よく彼を連れ立って退勤後のたゆんだ時間を紛らわしていた。

「今日もどこかで亡くなった誰かに対して喪に服するポリシーが先か、何よりも好きな造形美であるエゴが先か……まぁ、そのどちらでもあるのかもしれないね」

一度、葬儀の喪主を務めたことがある。身寄りがないバーのマスターの、とても簡素な葬式だった。せん妄状態で繰り返した鳥葬の望みは棄却され、彼は骨が崩れるまで焼き尽くされた。人が死んでからの一連のプロセスを見れば、僕たちがいかようにして発展してきたかを垣間見ることができる。それは煩雑なように見えて、とても本質的で、極めて効率的なプロセスだ。僕は彼が業火に焼かれている間中、ずっと関心をしていた。僕がどこで死のうとも、組織は必ず僕の死体を見つけ出し、戸籍に記録がされるだろう。彼は死にました。彼女は死にました。あいつは死んでいるはずだ……。

「僕も明日、喪服を着てみようかな」

「あぁ、一度試してみるといいよ」


翌日、訃報が届いた。

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