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ウサギ。
現実は常にそこそこなディストピアだ。人は欲深いから、ユートピアは常に雲の向こう側にしか存在しないし、最悪は常に認識の向こう側にある。大体の人がそれなりの地獄の中で、小さな幸せを慈しんでいる。時々ディストピアな現象がふっと沸き起こって(休火山が、自分が火山であることをうっかり思い出してしまうみたいに)、僕たちが踏みしめているのはそこそこなユートピアではなく、そこそこなディストピアであることを思い出す。そういうカジュアルな地獄に、少なくとも僕らは生きている。
でも、その方がいいと思う。ディストピアへの恐怖で支配されるより、ユートピアへの羨望を活力にしている方が健康的だ。カメから逃げ惑うウサギよりも、追いつけるかもしれないというそこはかとない希望を持ったカメの方が幸せだと思う。
だから僕はフレンチが好きだ。ウサギはとっても美味しいし、文化的な咀嚼がそれを後押しする。
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