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一万編計画

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一万編の掌編小説(ショートショート)を残していきます。毎日一編ずつ。
運営しているクリエイター

#ショートショート

不眠の神様。

「お前は俺に、愛されてしまったのさ」 彼は自らを不眠の神様と名乗った。 「でも、これは夢…

デイリー。

チャットGPTに食ませた文章を、マッチした相手に送る。まるで星新一が描いたディストピアみた…

Burnt butter.

よく熱したフライパンにバターを落とす。すぐにバターは輪郭を捨て、その芳香で他者に死化粧を…

インターホン。

鍵穴が変わっていた。マンションのエントランス、鍵のきっさきが触れた瞬間、この鍵が拒絶され…

Vivid.

ワインを飲むといつも眠くなる。これは紛うことなき啓示だ。宿命だ。世界はワインを通じで僕に…

唾棄。

ウイスキーに唾液を垂らすと、自分がウイスキーの一部として溶け込んだような錯覚に陥る。唾液…

パスタが有り余る。

毎日、500gのパスタを茹でている。たっぷりのお湯を十分に沸騰させて、塩をひとつまみ。ミックスペッパーを儀礼的に削り落として、円錐を象るようにパスタを投入する。時間は計らない。僕はパスタと会話をする。パスタ1本1本の要望を聞いてはいられないから、無作為な10本のパスタの意見を参考にする。聖徳太子みたいに全員の意見が聞ければどんなに良いかとは思うけど、例え聖徳太子であっても約1000本のパスタの意見全てを聞くことはできないだろうから、裁判員制度的な抽出が妥協点だ。 頃合を見て

半分夢を見る。

潮が満ちていく速度を感覚的として認知できないのと同じように、昼間の眠気は自然と満ちていく…

亜オフィス。

見知らぬ街の、見知らぬオフィスを眺めることが何よりも好きだった。ビルの2、3階にある、業…

スター・ラヴァー。

星空の下でも、僕は思いを告げることが出来なかった。星はありのままの輝きを降り注いでくれて…

人形棚。

またひとつ、人形が増えた。 使わなくなった筆箱。僕はチャックを開けて中を空にすると、彼女…

ドリーム。

「どうして、まだ夢に出てくるの?」 僕は彼女に尋ねた。夢世界のカフェテリアは、テーブルと…

アット・ラスト。

目が覚めると、彼は花束になっていた。 悪い冗談みたいな彼の部屋で、彼が成り果てたと思える…

蝿。

私は生ゴミにたかる蠅なんだ、と思った。彼は正真正銘の腐った蜜柑で、そんなことは匂いからも見た目からも分かりきっているのに、私はそれにほいほいと飛びついてしまう。それは私の弱さというより、私の宿痾だ。腐敗した彼を憎しみの対象に祭り上げるのは簡単なことだし、そうすることが一般的な消化の仕方だとは思うんだけど、私はさっき、すごく腑に落ちた。 彼にそういう話をした 「君は、横光利一的な蝿になれるよ」 「そうしたら、あなたは落ちる側ね」 「腐敗物は、堕ちた方が摂理にかなっている