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今求められる、ブランドプロデュース力

前回の記事で、これからは小売においても、体験が重要になり、今後は小売がエンタメにシフトすることについて述べた。
 
これまで小売が従事してきたモノを売るという行為は、体験の手段のひとつになった。
 
小売関係者がまず意識しなくてはならないのが、モノを売ることだけが小売の役割だという呪縛から自由になることである。
 
今までモノを販売することに時間のほとんどを費やしていた小売関係者にとって、マインドセットを切り替えるのは容易ではない。
 
しかし、ゆるやかに進行していた体験へのシフトは、昨今の情勢で、移行のスピードを加速させた。
 
期せずして、生き残りという意味においても、モノを売ること以外の収益方法の重要性も認識された。
 
エンタメにシフトすることは、裏を返せば、あらゆる業種がモノを売る活動に参入してくることでもある。
 
業界の境界線が曖昧になり、様々な業種が競合になる。
 
小売のエンタメ化においては、ブランドマネジャーの役割がより重要になる。
 
ブランドマネジャーのもとに、モノを売るチーム、イベントを行うチーム、プロモーションを行うチームなど、ミッションの異なるユニットが組織され、ブランドマネジャーはブランド体験の総合的なかじ取りを行う。
 
ブランドマネジャーが最も力を入れるのは、世界観の構築と具体的方向性の設計である。
 
そのブランドがどんな理念を持っているか、どんな価値を提供できるのか、そして、その思想をどのように具現化するのかを設計する必要がある。
 
さらに、それらをチーム全体に伝える力も重要になる。
 
一方で、複数ある収益源の中で、何でどのくらい収益をあげるのかのビジネスモデルを構築する力も求められる。
 
これは何を収益の中心とするかで、そのブランドがとる戦略が大きく変わってくるからである。
 
音楽の例で言えば、CDは無料化して、ライブのチケット代やグッズ売上で収益をあげるビジネスモデルがある。
 
このとき音源を無料にすることは、ライブに来てもらうための、宣伝の役割を担っている。
 
またターゲットをコアファンに設定して、ファンクラブを収益の柱にして、限定イベントや映像などを販売して、収益の柱にする場合もあるだろう。
 
大事なのはすべてで利益を上げようとせずに、収益を確保するカテゴリー、プロモーションと割り切るカテゴリーなど、ビジネスモデルを明確にすることである。
 
世界観とビジネスモデルを設計し、総合的にプロデュースすることがブランドの成否を握り、ブランドマネジャーの力量が試されるのである。
 
これからは小売において、よりブランドマネジャーの役割が重要になり、プロデュースのヒントを得るために、小売以外の他業種に、もっと目を向ける必要がある。

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