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体験にシフトするには

前回及び前々回の記事で、これからの小売はプロダクトよりもコンセプトが重要になり、
体験が価値になることについて言及した。
 
現代の小売は、POSシステムなどの活用により、品揃えの精度が上がり、手に入らないモノは少なくなった。
 
しかし一方で、どこでも同じ品揃えをするようになり、店舗の同質化が進み、それがショッピングの楽しさは損なわれている。
 
加えてECが普及することで、商品のバリエーション、ワンクリック決済や即日配送などの利便性は、ますますオンラインに代替されるようになる。
 
したがって、これからは店舗での体験がより重要になる。
 
体験にシフトすることは、これまでと異なるフィールドで戦うことを意味する。
 
これからリーチすべきは顧客の可処分時間であり、ライバルは隣の店でなく、映画やスポーツ、音楽などのエンターテイメント産業が競合になる。
 
買い物体験はひとつのエンターテイメントにシフトし、ショッピング×エンターテイメントが、これからの小売が目指すキーワードになる。
 
ショッピングのエンタメ化においては、ビジネスモデルの見直しも必要である。
 
例えば、エンタメ業界の代表のスポーツチームの場合、チケット収入、グッズ収入、放映権、スポンサーシップなど、構成の大小こそあれ、主な収益の柱が複数ある。
 
これを今の小売業界に置き換えてみれば、収益はグッズ収入のみということになる。
 
ビジネスの定石から言えば、収益の柱を複数持つことが大事である。
 
収益の柱を増やすには、店舗が掲げるコンセプトを中心に、他にどんなことが顧客に提供できるかのブレストを、ゼロベースで考えることである。
 
それは突飛な発想でもいい。
 
すでに扱っている事業があれば、そこからどのように他の業種に波及させることができるかを考える。
 
筋道が通っていれば、だいたい相互に好影響をもたらすことが多い。
 
例えば、スーパーなど生活必需品を扱っている業態にも、イノベーションの萌芽は詰まっている。
 
ごく単純な例で言えば、スーパーが料理教室を主宰し、売場に併設することは、レッスンのついでに食材の購入につながるなど、双方にメリットはあるだろう。
 
商品のプロモーションとトークショーを兼ねたイベントの開催でもいいかもしれない。
 
またスーパーに集まる客層に主婦が多いのであれば、主婦のコミュニティを必要としている企業とマッチングを仲介することができるかもしれない。
 
このように、どんな業態でも体験へのシフトは可能である。
 
収益がひとつしかないことがいかに危険か、昨今の状況で皆知ることとなった。
 
これからの小売は、エンタメへのシフトと収入の柱を複数持つことを両立させることが、顧客への価値提供とともに、生き残りおいても重要になるのである。

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