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オンラインに必要なもの

昨今の社会情勢により、商談の形が大きく変わった。
 
バイヤーが行う商談は、簡単に言えば、自社の店舗で取り扱う商品を、取引先から購入することが目的である。
 
数ある取引先の、数ある商品の中から、製品のスペックやクオリティ、生産背景などをチェックし、自社の店舗にマッチする商品を選び出す。
 
さらに原価や数量、あるいは納期やオプションなどの諸条件を交渉し、取引を成立させる。
 
築地などの卸市場での仕入、あるいは八百屋などの個人商店での買い物を想像すると、イメージがしやすいかもしれない。
 
何かの目的のために、品物を仕入れるという意味では、寿司屋が魚を調達することも、主婦が野菜を購入することも、バイヤーが店舗で販売する商品を仕入れることも、根本的には同じである。
 
従来はどちらかが相手を訪問する対面型の商談が一般的だったが、最近はテレカンを利用したオンライン商談が主となった。
 
数ヶ月テレカンの商談を行ってわかったことは、商談はオンラインでも大きな不自由はない、ということである。
 
データの共有は画面上でも可能であり、条件の交渉は必ずしも対面である必要はない。
 
むしろ、商談のための移動がなくなったことで、お互いに移動に伴う費用は発生しなくなった。
 
加えて、移動のための時間がなくなったことで、直前まで別の仕事をすることが可能になり、また商談終了後、直ちに別の仕事に取り掛かれることで、間接的に他の仕事の効率化につながり、労働時間の圧縮にもつながっている。
 
さらにテレカンの性質上、話す内容がコンパクトになり、1回あたりの商談時間もコンパクトになった。
時間と費用のコスト削減の利点があまりにも大きく、このメリットに気づいてしまったことで、今後はオンラインでの商談がスタンダードになるだろう。
 
逆にバイヤーにとって唯一のデメリットは、オンラインでは商品の現物を手に取ることができないことである。
 
今までの商品のチェックをするときは、実際の商品を見て、触って、視覚情報や質感などのあらゆる情報を得てきた。
 
しかし、テレカンでは今のところ、それをクリアする方法はない。
 
事前のサンプルの送り込みなども不可能ではないが、それでも限度はある。何から何までサンプルを取り寄せるというわけにはいかない。
 
これからのバイヤーに必要なのは、商品を脳内再生する力である。
 
具体的には、手に取れない商品を、リアリティを持ってイメージする力である。
 
そのためには、生地や素材に関する知識はこれまで以上に重要になる。
 
生地や素材を聞いただけで、機能面のスペックだけでなく、具体的に発色や質感がイメージできるかがポイントになる。
 
実店舗の場合は、サイズや体積などの立体情報を、どれだけ頭の中で再現できるかが問われる。
 
このことは、ECでの買い物をするときと同じである。
 
ECでの買い物は、基本的に商品が手元に届くまで現物に触れることはなく、事前の情報と想像力が主な判断材料になる。
 
逆に、テレカンで製品を販売する場合は、購入者の脳内再生をどれだけアシストできるかがCV率をアップさせるポイントになる。
 
オンラインでの商談は買う側、売る側ともに新たなスキルが求められるのである。

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