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連載小説★M&A春風 第29話 デジャブ

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ここまでの3行あらすじ
M&Aターゲット候補選定を依頼された酒井真奈美。自力でロングリスト(買収候補リスト)を作り、銀行指摘の加味しつつ、さらに選定されたショートリスト作りに乗り出す。

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本編

「片っ端から、ロングリスト記載企業の事業概要を調べましょう」
「わかりました。どうやって調べましょうか」
「まずは、各社のホームページから、事業概要や製品をチェックね」
「その時点で、違いそうな企業は除外していけば効率的ですね」

 さすが、このようなプロジェクトに抜擢されただけある。
 内村は何をすべきか、呑み込みが早かった。

「可能性がありそうな企業については、会社概要シートを作りましょう」

 項目は、先ほどの銀行フォーマットを参照し、
 ・概要:所在地、設立年、代表者、従業員数、拠点、事業概要、沿革
 ・株主構成
 ・財務数値(P/L、B/S)

「概要は大抵ホームページからチェックできるわ」
「でも、それ以外の情報はHPに記載がないかもしれません」
「そうね。上場企業であればMA推進部で契約している外部データベースを活用したら必要な情報はすぐに取り出せるわ」
「それは助かります。でも、非上場企業はどうしましょう……」

 真奈美は、事前に山田から教わったことを思い出しながら答えた。

「HPか図書館で、決算公告や官報を調べると、
 その企業の単体の財務諸表はわかることが多いわ」
「そうなんですね」
「あとは、非上場企業版四季報というものもあるらしいわよ。
 これはそれほど費用かからないから、買っちゃいましょうか」
「わかりました。それはうちで払います」
「ふふふ、助かるわ」
「はい……ところで……」

 内村は言いにくそうなそぶりをしつつ質問した。

「会社概要は、銀行にお願いしたら出してもらえませんか?」

 真奈美はニコッと笑った。

「お願いすればくれるかもしれないわ。
 でもね、自分でやらなきゃ、経験は蓄積されないわよ」

 真奈美は、どこかで聞いたことがあるセリフだな、と苦笑いしたが……
 内村は目を輝かせて答えた。

「そうですよね。はい、がんばります」

 ……………………………………………

(補足解説:飛ばしてもOKです)
 上場企業であれば、有料データベースを使ってなくても、HPで有価証券報告書やIR資料を探せば、ほとんどの必要情報が載っています(もちろん、部門別データの詳細版とかは開示されていないことも多いですが)
 無料データベースとしてはバフェットコードさんが有名ですね。

 問題は、やはり非上場企業の調査です。
 本文記載の方法のほかに、
 ・帝国データバンク(TDB)や東京商工リサーチ(TSR)レポートを取得
   (有料)
 ・ニュースリリースや沿革をくまなくチェック
   (株主構成が類推できるかも)
 ・登記簿を取り寄せる
   (株式発行の状況がわかる。ネットでも数百円で取れる)
 ・求人サイトをチェックする
   (意外と、自社の売上とか書いていることも多い)
 ・最後は金融機関に頭を下げる
 などが調査手段となります

 調査対象会社が少ない場合は、費用対効果を考えると、さっさと有料レポートを取る方が早いかもしれません。
(ここまで赤裸々に地道なノウハウを書いちゃう小説はなかなかないでしょ?メモっていいよ♫)

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