思考の整理学
本の紹介
1923年生まれの外山滋比古さんが1980年代に執筆した本。アイデアが生まれ、思考をのびのび思考するには?そんな問いに答えながら、考えることの楽しさを満喫させてくれる本。
[要約]思考を広げ深めるには3つを守れ!
1. 様々な分野からアイデアを得る
収穫逓減の法則、20:80の法則
一つの分野に執着しても、一定の生産性にたどり着くとそれ以上効率的にアイディアを得ることができなくなる本質とは離れた話で偶然の産物を手にする
アイデアを得るには、本質とは離れた/脱線した話をすることで思いがけない副産物的なセレディピティを手に入れることができる考えてから実行する
何事も手を動かす前に考える時間を設けることが必要。ただし、考えることだけで終わってしまうのではなく、仮説がまとまり始めたら実際に手を動かしてみる。
[例]読書:本を読む前に何を得たいのか、調べたいのか、考えてから本を読むと内容理解の深化につながる読書のレベルを上げる
知的活動として、読書の必要性を訴えられる世の中だが、量的な話に執着しがちで質的な話が無視されている。下記の3つの質的な読書レベルのうち、#1、2だけでなく、#3の読み手の想像力、直観力、知識など総動員して読む思考的読書を心がける既知のことを再認する
未知のことを理解する
新しい世界に挑戦する
2. 思考の抽象化や具体化を実践する
情報の具体/抽象レベルは3つに分類される。
第1次的思考:ニュース、情報(個別事象の具体的な情報)
第2次的思考:ダイジェスト・要約(他の情報と絡め纏めた情報)
第3次的思考:原理原則、哲学、ことわざ、思考(類似した事象を体系化された抽象的な情報)思考を広げる方法:
普遍性を持った第3次的思考を目指す思考をより深める方法:
抽象的な知識を現実世界の具体的事象に当てはめる
3. 休息をとり、時と場所を変える
人間の頭は、情報過多にならないよう本能的な情報整理能力が備わっている
この本能を最大限活用する方法は、休息をとること
最も効果的な方法は睡眠。先人は、考えたことは一晩寝かせて朝に再考した
また、リフレッシュのために場所や時間を変えて、考え直すことも思考の整理につながる
書評
質の高い読書を心がけたい
1923年生まれの外山滋比古さんが1980年代に執筆した本。今から40年前ではあるものの、その当時も過去と比べて情報過多になっていた。
その中、読書の量だけでなく想像力を働かせて読書をするよう質を大切にして欲しいという外山さんのメッセージが2020年代の現代にも同じことが言えると思う。
現在、スキルを獲得しようとする社会人に向け、書店では毎週のようにビジネス本やノウハウ本が出版される。確かに働く上で役立つ本が体系的に纏まっており過去の原理原則をわかりやすく解説した本であり、便利な世の中になったと感じる。ただし、現代の読書は情報収集としての読書であり、想像力を総動員するような高次元での思考的読書ではない。言い換えると、現代のビジネス本はコンテンツを誰もが読めるようにしたことで、トレードオフ的に読者の想像力を奪いつつあり、真の思考術を実践的に教えるものは限りなく少ないように思える。
一方、外山さんの思考の整理学は、仮説思考、ロジカルシンキングなどを、様々な分野と掛け合わせ多角的に研究した内容を「読者の想像力で読み解いてみろ」と言わんばかりの挑戦状のように感じ、面白さを覚えた。
外山さんの言葉を借りれば、未知のことを理解しながら、新しい世界に挑戦できる一冊だと思う。
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