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2024年最初に読んだ本

2024年最初に読み終えた本は、酉島伝法さん『金星の蟲』(ハヤカワ文庫JA、23年10月18日初版発行)でした。単行本『オクトローグ』を改題。身体から謎の寄生虫を産んでしまう表題作や、落下を続ける塔の話、巨大なブロッコリーを探査する話など、まったく正月らしくない奇想小説でした。


表題作は、印刷工場で働く主人公がお腹の調子が悪く、尻から出血していくブラック労働小説かと思いきや、ある日、大便かと思った物体が動き出すという話。しかし、その生物を同僚に見せても、その瞬間ただの大便に変わっている。幻覚の話かなと思いきや、物語はどんどん混迷していく。

ほんとに意味不明です。たとえば、いきなりこんなシーンが出てきます。

 バスは辛うじて運行していたが、途中の停留所で降ろされ、手漕ぎの渡し船に乗り換えさせられた。このあたりは窪地らしく、池同然になっている。

『金星の蟲』p50

渡し船?舞台は現代だったはず。池?そんな話は一切、出てきませんでした。

酉島作品はこんな感じで、ドライブのかかり方が異常。車に乗っていたはずが、瞬きしたら新幹線になっているようなもんです。『金星の蟲』以外の収録作は、独特のオリジナル用語が大きく、まさしく異世界の小説。主人公もたいてい、人間ではありません。

まったく正月らしくない中身でしたが、これこそ物語を読む醍醐味かも知れません。

2023年最後に読んだ本は、川本直さんの『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』でした。24年末最後の本は何かな。楽しみに読み進めていきます。

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