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読む「世にも奇妙な物語」ーミニ読書感想『11文字の檻』(青崎有吾さん)

青崎有吾さんの短編やショートショートをまとめた『11文字の檻  青崎有吾短編集成』(創元推理文庫、2022年12月9日初版発行)が面白かった。「平成のエラリー・クイーン」とも呼ばれる青崎さんの作品。本書で初挑戦しました。ドラマ『世にも奇妙な物語』に通じるような独特でテンポの良い魅力を感じました。


表題作にもなっている『11文字の檻』が特にお気に入り。巻末の著者解説によると、法月綸太郎さん『しらみつぶしの時計』や小川一水さん『ギャルナフカの迷宮』に並び、『世にも奇妙な物語』の一作『壁の小説』に影響を受けた作品だそう。(p355)

国家に反抗的な者を隔離する収容施設に、官能小説家の男が投獄される。その施設では、壁に11文字のパスワードを書き込み、正解なら出られるというルール。ひらがなや漢字で、「政府に恒久的な利益をもたらす11文字」が条件。星の数ほどパターンのある選択肢の中にある正解に、小説家は辿り着けるのか?

急な設定(主人公の窮地)、理不尽な体制や組織、説明なしで進行する不条理、浮かび上がるルール、訪れるチャンス……。『世にも奇妙な物語』の待つ全ての要素を兼ね備えています。

『恋澤姉妹』も秀逸。自分たちに干渉するあらゆる人間を天国に送ってきた最強の姉妹に、師匠を殺された殺し屋が挑む話。主人公は姉妹の生い立ちなどから攻略のヒントを探ろうと、姉妹と何らかの接点が過去にあった人を巡って世界中を旅する。そして最後の対峙、戦闘。ここでもテンポの良い展開、文章が光ります。

『世にも奇妙な物語』は、それぞれのストーリーが30分程度で完結する短さが特徴。その中にどんでん返しや感動を詰め込んでいる。中には5分程度の極端に短い話もあります。本書でも、『your name』はなんと3ページの超ショートショート。なのに、びっくりの展開があります。

このままいくと全作品を紹介したくなるほど面白い。今後、長編の青崎作品にもチャレンジしたいと思います。

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