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読書熊録

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素敵な本に出会って得た学び、喜びを文章にまとめています
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2021年11月の記事一覧

伊藤計劃の再来ーミニ読書感想「同志少女よ、敵を撃て」

伊藤計劃の再来ーミニ読書感想「同志少女よ、敵を撃て」

逢坂冬馬さんの「同志少女よ、敵を撃て」を読み終えた。圧巻の物語。2021年を象徴する一作になった。「あの年は同志少女を読んだな」とこの先ずっと思い出すことになるだろう。

秀逸なのはまず、題材。第二次世界大戦の独ソ戦のうち、実在したという少女狙撃隊にスポットを当てている。男性目線で語られがちな戦争のうち、銃後の女性でなく、最前線の戦う女性にスポットを当てた。

いや、「戦わざるを得なかった女性」の

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想像を超えて壊れているけど思った以上に強い米国-ミニ読書感想「最悪の予感」

想像を超えて壊れているけど思った以上に強い米国-ミニ読書感想「最悪の予感」

マイケル・ルイスさん「最悪の予感」を読んだ。ルイス節と言える圧倒的なストーリーテリング。しかも題材は、目下進行中の米国の新型コロナウイルス対策ときてるので、面白くないはずがない。引き込まれた。

本書の内容には二重に驚かされる。一つは、CDCを筆頭に「優秀」なイメージのある米国の感染症対策が、これほどまでに脆弱で、機能不全で、壊滅的なのだという驚き。にもかかわらず、民間や個人の活躍である程度はリカ

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「10代のための読書地図」をもとに読み進めてる本がみんな面白い

「10代のための読書地図」をもとに読み進めてる本がみんな面白い

本の雑誌社さんの「10代のための読書地図」をもとに、そこに推薦された本を読み進めているのだけれど、これが例外なくみんな面白い。同じことを一回書いたけど、もう一回書きたいくらいに面白い。

たとえばアン・マキャフリー「歌う船」(創元SF文庫)。未熟児で生きられない女の子が船の身体を与えられるというストーリーは、アンドロイドや超人類についての議論が進む今日にも刺さる設定。

たとえばフレドリック・ブラ

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