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男と女

この物語の主人公美帆はどこか客観的で感情的だ。
子供のころからどこか自分のことをとても冷静に考えている。
それは生まれ持った美貌のせいなのか、
子供のころに体験した母との出来事なのか。

35歳になる美帆は丈二と7年前に別れるも、2年前に再会し、復縁していた。
心のそこから愛していたからこそ、別れ、しかし再会し、復縁したが

もちろん全然愛していないわけではない。
ただ昔ほど愛していないのも事実だ。
 
 
裏切った方は忘れていても、裏切られた方は覚えている。
 
そうよ、あなたは私を裏切った。
あなたに裏切られて、私は何日も何十日も何百日も考えた。
私のどこがいけなかったのだろう?
何があなたにとって不満だったのだろう?
あなたは私にどうして欲しかったのだろう?
 
私はあなたを心から愛していたし、
あなたのことを自分の身体や命よりも大事だと思っていた。

 
 
そんな葛藤を抱えている時、
一度も忘れたことのなかった仲間優司と再会する。
運命とはこういうことなのか。
タイミング、自分の中の感情、相手の感情。
すべてが何かの歯車を動かしていく。
 
 
優司との再会、丈二との関係の変化、父親の死、
人生の変化の中で美帆は女として変化していく。
 
 
美帆はこの世に生まれてきたことをずっと呪い続けてきた。
そしていま、女として生まれてきた自分が無性に許せなかった。
 
 
美しく生まれながらその美しさをどこかコンプレックスに感じる美帆。
人間の感情とは難しい。
 
 
親というものになにか大きな感情を抱かざる負えない美帆は
自分が母親になることへの恐怖、不安を抱える。
その不安を優司の言葉が溶かしていく。
 
 
お前が生むんやない。
そのお腹の子がお前を選んで生まれてくるんや。
やから、そいつが本気で生まれたい思うとったら、お前がどげんことばしてみても無駄なだけやと俺は思うぞ
 
 
この世への道案内をすればいい。
そう感じ、美帆の心は決まる。
 
どこか深いところでのつながりを感じる美帆と優司。
それはなぜなのか。
自分の中にある感情が動くときなど自分ではわからない。
その感情の変化をお互いがお互いに感じていることなど
そうめったにあることではない。
 
 
俺はあんときお前のために生きないかんて心底思った。
お前が生きとったこと。
そして生きたお前とまた会えたこと。
もうあげん嬉しかことは二度とないと俺は思うとる
 
 
自分が忘れたことのない相手からこの言葉を言われたら
どんなことを感じるだろう。
きっと自分の中にあるなにかが大きく動くはずだ。
人間の中にある感情。
物語を読むといつも考える。
私ならどう感じるだろう。
私ならどう言葉にするだろう。
その自分の中にしかない感情を。
だから小説は面白い。
自分をどこか知らない世界へ連れてってくれる。
現実と夢の間の世界に。
 
 
Written by なおこ
アラフォー女 


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